内容説明
雑誌の個性に合わせて作品を書き分けた松本清張が、アウェイの女性誌で書いた小説群に着目。そこに登場する女性主人公たちを、お嬢さん探偵、黒と白の「オールドミス」、母の不貞、不倫の機会均等といったキーワードを軸に考察し、昭和に生きた女たちの変遷を映し出すと同時に、読者の欲望に応え続けた作家の内面に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
153
映画やドラマの影響か清張作品に登場する女は悪女のイメージが強いが、実際は理不尽な運命に抗う女だった。犯罪に巻き込まれた良家の子女が真相を探ったり、思いがけず転落し被害者や加害者にもなってしまう。金や自由や性の欲望を満たしたいと願い、女を低く見る時代に男と伍して生きようと知恵を絞り、時には暴走し取り返しのつかない結果を招く。女の美しさだけでなく黒い部分を描き出したからこそ、清張ミステリは読者に支持され令和の世までも読み継がれたのだ。繰り返し映像化されるのも、黒い女を演じる女優が飛躍する契機になるからだろう。2025/08/09
nonpono
123
20代から読んでいたし米倉涼子のドラマも見ていたが昨年、再放送で西村晃、名取裕子、山崎努の「けものみち」を見て、男と女の業、いらやしさにびっくりした。松本清張、明治42年生まれ。太宰治と同じ年にまた、びっくり。「清張が書こうとしたのは、物語のきっかけとなるのが殺人であれ不倫であれ、その裏側にある心の闇だった。」だから、作品が古びらなく、今でもドラマ化されるのだろうか。市原悦子の「家政婦が見た!」の第1回目の原作が清張だとは知らなかった。そして、「天城越え」の少年の動機にまた驚く。酒井順子の筆が走っていく。2025/09/30
まーくん
108
はて?表紙の美人は誰?見たことあるような…。細腕繁盛記の新珠三千代さん若かりし頃でした。このニヤケタお顔の清張先生が著された膨大な作品を読み込まれ、著作に登場する女性について分析された本書の著者はエッセイスト酒井順子さん。諧謔、皮肉が効いた辛口の批評で私のお気に入りですが、本書ではそんな気配はなく、純粋に作品を分析されてます。掲載女性誌の読者層も清張は考えてストーリーを構成してるという。清張は独身のお嬢さんより陰のある夜の女を描く方が得意だったよう。⇒2026/04/10
fwhd8325
94
松本清張との出会いは、映画やテレビだったと思います。原作の面白さを映像は見事に再現してくれていたように思います。人間の持つ闇の面が生々しく感じます。人の弱さをつく鋭さに喝采や自身が抉られたような感覚を覚えます。来年は、久しぶりに福岡へ行こうと思っていますので、文学記念館は必須です。2025/12/16
遥かなる想い
92
松本清張が生み出した「お嬢さん探偵」と「悪女」に焦点を当てて、昭和の女性たちを描いた作品である。 女性がまだ社会で働くことが少なかった時代に、 どう生き、松本清張はそれをどう描いたのか? 懐かしい作品群とともに、昭和の風景が甦る。 社会派推理小説の大御所として、時代を描いた松本清張の 視点が 登場女性の描写により、また違った 風景に見えるのが面白い。 謎解きではなく、人間の闇を描いた作家の 評伝作品だった。2026/05/20
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