内容説明
白い犬の後を追いかけてきたタロコ族の少年と、自分を売ろうとする父親から逃げてきた少女。山の深い洞穴で二人は出会い、心を交わす。
少年が少女の村に、少女が少年の村へ入れ替わり出ていくのを、巨人は見つめていた。
山は巨人の体であった。人々に忘れ去られた最後の巨人ダナマイ。彼の言葉を解すのは、傷を負った動物たち。
時を経て再会する二人を軸に、様々な過去を背負う人々を抱えて物語は動き出す。
舞台は原住民と漢人、祖霊と神が宿る台湾東部の海豊村。
山を切り崩すセメント工場の計画が持ち上がり、村の未来を前にして、誇りを守ろうとする人々と、利益を享受しようとする人々が対立する。
巨人がなおも見つめ続ける中、かつてない規模の台風が村を襲い、巨人と人間の運命が再び交差する――。
物語を動かすのはつねに、大いなるものに耳を傾ける、小さき者たち。
★2023年台湾書店大賞小説賞受賞
★「博客来」ブックス・オブ・ザ・イヤー入選
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
127
台湾人気作家、新作。期待を裏切らない面白さ。山地少数民族の巨人伝説から。表紙も作者。 好きな作家。自然描写の美しさ!2025/07/27
NAO
53
歴史の中で常に切り捨てられてきた少数民族と忘れられそうになっている伝説の巨人の物語。海風クラブで繰り広げられる人間模様を通して、キリスト教と祖霊信仰、老人と若者、男と女いったその土地に潜むさまざまな差異と、それらの絡まりあいが浮かび上がってくる。自然とともに生きてきたトゥルクは、自然の中に巨人を見たが、常に虐げられ追いやられ続けて、トゥルクという少数民族も巨人も忘れさられようとしている。彼らの存在を無かったことにしないために、これからも生きて、語り伝えなくてはならない。2025/07/30
藤月はな(灯れ松明の火)
44
先住民であるという事から厳しい環境に置かれた少年少女は不思議なトンネルによって邂逅する。だが、彼らに待ち受けていたのは時代の流れによる残酷さだった。後から移住してきた者達によって統治するようになった国によって土地を奪われ、散逸して生活するしかなかった先住民族の苦難は『都市残酷』を彷彿とさせる。しかし、こちらは人間たちによって忘れられ、痛めつけられて死に向かおうとしている巨人(自然)も絡み、ファンタジーなのにより一層、過酷な読後となった。都市に住む台湾人によるマイクロアグレッションや反対運動の意識の違いに2025/10/09
Apple
38
私たちの生活や、進歩、歴史は、人間自身が考えているよりももっと他の大いなる意志や存在によって偶然築かれたものなのかもしれない。自然への敬意を失った人々は、結局は自分自身の生活の礎を失うのかもしれません。巨人の神秘的な存在感が、現実に基づいた架空の土地「海豊村」の歴史物語にそのようなメッセージを与えているように感じられました。台湾の田舎暮らしの様子を、本書を通じて垣間見ることができました。ある村の歴史が世界の誕生から語られる、神話みたいな雰囲気の物語でした。2025/10/11
ちえ
29
洞窟の中で出会う少年と少女。最後の巨人と三本足のマングース、セメント工場建設計画。子どもが大人になるまでの時間、台湾東部の村を軸に、神話、大地、歴史、原住民、自然、環境といったものが絡みながら、登場人物や者たちの物語がタペストリーの様に紡がれていく。カバーと途中のイラストはフィールドワークをする著者の手になるもの。生き物や植物、特にコウモリに関して、知識の深さを感じ、読んでいて楽しかった。呉明益の小説はいつも私にその場に居るような、少し上の方からそこを観ているような、そんな感覚を覚えさせる。2025/06/12
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