内容説明
私たちは,人生という物語を生きている。人格を通じて省察することが責任を引き受けることであり、物語的責任は他者との許しと約束によって、支え合う関係へと深められていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
108
責任と物語という意外な組合せに興味を覚えて手にした。自由意志を前提とする伝統的責任概念に対して、自己を物語化して解釈をする「物語的責任概念」という考え方がユニーク。責任を引き受けることは、物語の訂正を要求するが、その訂正において「許し」と「約束」が救済策となるというアーレントの指摘が鋭い。不可逆性への救済が許しで、不可予言性への救済が約束なのだと。「主人公としての自己」という本書の結論には異議もあるが、強者の論理で自己責任論を振回す風潮の中で、戸谷先生が提唱する「弱い責任」や「物語的責任」に救いを感じる。2025/02/07
yoshichiha
2
ハンナ・アーレントを引いて「許し」と「約束」の考え方を、物語と訂正可能性に結びつけて論じたパートは面白かった。許しによって、物語から生まれる多様な影響を包摂しつつもそれを終わらせられること、約束によって、物語が進んでいく道筋をつけられること、というのは、「世界は自分の思い通りにはならない」ということで思考停止しないための推力になる感覚。2025/07/01
brzbb
1
アーレントを引用して、行動は他者からの許しによってしか終結しないと論じる部分は興味深かった。たまたま観た『ブリンク・トゥワイス』に「許しなんて幻想だ」という男(クソ野郎)が出てくるので。ただ、決定論が否定する自由意志と両立論者のいう自由意志は別のものなのに、なぜ両立論者は自由意志という言葉を使いたがるのだろうか。ハムレットがいまでも悩み続けているように、決定論的宇宙でも人は選択に悩み決断することができる。2025/04/18
name
1
よく分からなった2025/02/26
Go Extreme
1
概念と哲学的枠組み: 伝統的責任概念 自己責任論 強い責任と弱い責任 道徳的責任 自由意志と責任 決定論と責任 責任の主体と倫理 責任と行為: 自発性と責任 自己理解と行為の評価 行為とその帰結 責任倫理と信条倫理 回顧と責任の引き受け 決定論と自由意志: リベットの実験 アンスコムの意図的行為論 行動の予測可能性 自由意志の再定義 物語的責任と自己理解: 物語とアイデンティティ 行為の物語的構造 物語の訂正可能性 許しと約束の倫理: 許しの力 信頼の形成と約束 社会的和解 物語の核心と倫理的選択2025/02/15