内容説明
1945年12月、復員船は博多に着いた──。
戦争末期、一兵士としてフィリピンのミンドロ島の警備にあたり、一年弱の俘虜生活を送った復員兵を待っていた、戦後社会の混乱、家族や旧友との再会……。
戦争と戦後体験から生まれた名作を集成。
遺稿となったエッセイ「二極対立の時代を生き続けたいたわしさ」を付す。
〈解説〉城山三郎 〈巻末エッセイ〉阿部昭
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なかすぎこう
3
大岡氏の「俘虜記」を読んだら、日本に帰った著者はそれからどうしたのか、と知りたくなると思う。それをテーマ別?に書いたいくつかの短編から成る。私が一番好きなのが「わが復員」。復員してきた著者に対して妻は感情的にならない。やがて夜が来て、子供を寝かしつける床のそばで彼女は思い切り涙を流していた。外国の人から「日本人は悲劇にあってもあまり大声で泣かないで我慢するのね」と言われたことがある。いや、我慢するのでなくって・・と言い淀んでしまったが、この短編を読むとその辺りの心理がよくわかるような気がした。(徳間書店)2025/06/24