内容説明
ヴィクトリア朝大英帝国の巨大情報網の核となった電信事業。それを担う一員である電信士ローラ・テンパートンは、仕事と家庭を持つという夢の間で悩む日々を送っていた。ある晩、彼女は電信局を訪れた局長アクトンの甥ネイト・ホーキンスを案内するが、アクトンは密室と化した局長室で死体となって発見された。容疑者と目されたネイトの無実を確信したローラは、自らの職能を活かして調査に乗り出す。翌日、警察署には謎めいた電報が届くが、そこには被害者アクトンともう一つ別の名が記されており……。本格ミステリならではの趣向を随所に凝らした第三十三回鮎川哲也賞受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
142
作家が得意分野で小説を書くのは珍しくないが、著者は近代英国史が専門らしい。前作『帆船軍艦の殺人』はフランス革命軍と対峙する英国軍艦が舞台で、本書ではヴィクトリア朝時代に通信革命をもたらした電信システムが犯罪の背景なのだから。歴史好きでも知らない人の多いニッチな領域だけに、読者を細かな知識でうんざりさせず引き込んで読ませる力が求められる。正直ミステリとしては今ひとつだが、19世紀後半の英国で働く女性の実像や、当時のインターネットと称せる電信が社会に与えた影響が歴史小説的に描かれて厚みのある物語になっている。2025/07/03
ちょろこ
118
着地までの時間が面白かった一冊。時はヴィクトリア朝大英帝国。主人公の女性電信士ローラが職能を活かして殺人事件を紐解くストーリー。この作家さんは馴染みのない世界を舞台にミステリを描くのが巧い。今回も電信の仕組みといい、想像力と共に時代と謎解きを味わえた。着地点はわかりやすいものの、不可解な局長の密室毒殺事件から、不可解な電報予告、そして行動力と頭の回転も抜群のローラの恋模様を絡ませて複雑な様相を見せながらの時間はこれぞミステリ!で面白かった。綺麗なこの終わり方も好き。次作はタイトルに少し捻りがあるといいな。2025/07/15
オフィーリア
58
おおこれは良かった。舞台は19世紀のイギリス、電信をメインテーマとしたミステリ。古き良き王道古典ミステリの味わいがしながらも読みやすく、電信を活用し尽くしたこの舞台ならではのトリックも好み。前作同様ミステリの土台となる舞台描写が抜群に上手いですね。2025/07/21
ゆのん
49
まだ馬車が走っている時代のイギリス。主人公は結婚か仕事かと悩む年頃の電信士のローラ。彼女の職場で密室殺人が起こり事件の容疑者に一目惚れしたローラは真犯人を探す為調査に乗り出すミステリ。日本人作家が描いているのを忘れてしまう程にイギリスミステリで驚く。調べているうちに事件関係者の秘密が明らかになるのもポアロ物の様で私好みだ。真犯人はかなり最初の方で解ってしまったのだが詰めの甘いミステリファンの私なので密室トリックの謎は解らずラストの謎解きは楽しめた。伏線を伏線と気付かせない描き方も好みだ。次回作も楽しみ。2025/03/04
がらくたどん
48
恋も推理もモールスで♡前作は幽霊が出る英国帆船が舞台のなかなか大仕掛けの殺人ミステリだったが、今作は一転ツートントンのモールス信号が繋ぐビクトリア朝の最新通信網が謎を打刻し真実へと巻き取られていく。ローラ29歳は独身ベテラン電信士。女性だからって仕事と恋の両方を望んじゃだめなんて変じゃない?って思う聡明なロマンチスト。彼女の前に昇進のチャンスと一目ぼれの彼氏が現れた途端に職場で上司が殺され意中の彼氏が容疑者に!なにこのハーレクイン小説もビックリな展開は♪立ち込める暗雲、靄る乙女心。仕掛けは今回も目を瞠る!2025/08/02
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