内容説明
世界最大の難民キャンプで、作家が出会った「もう一つの戦争」。希望なき世界でたたかう仲間たちを描く、大反響ルポルタージュ!
前回訪ねたガザとヨルダン川西岸地区に続き、バングラデシュにあるロヒャンギャ難民キャンプを訪ねた著者。世界が暴力に覆われるなか、困難を増す難民の人々の現実と国際人道支援の最前線を描く。歴史学者・藤原辰史氏との対談を収録。
「著者は深く傷ついている。苦境に生きる人たちの姿を見、話を聞き、その理不尽に憤り、でも憤るよりもっと深く、傷ついている。傷ついていることを、隠さずに書いている。私はそのことに心動かされ、そして、なんと信頼できるルポだろうと思うのだ。」角田光代さん(群像2025年5月号より)
「いとうさんが訪ねた場所は、現代史の「傷」の現場だ。私は本書を生きた歴史の本として読み、著者とともに世界を旅した。」藤原辰史さん
「私たちがいなくていい世界にするために、私たちが今ここにいる」(「国境なき医師団」メンバーの言葉)
彼らはこの希望なき世界で、信じることのできない希望のためになお“踏みとどまっている”、あるいは“退避してひたすら前方をにらんでいる”、または“一歩ずつ目的地へにじり寄っている”。つまり、それでも彼らはいる。現在、世界はきつい。希望は日々少なくなる。しかしそれでも、いやだからこそ「私たちが今ここにいる」必要がある。そして俺も『「国境なき医師団」をそれでも見に行く』のだ。――いとうせいこう
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真田ピロシキ
7
感傷の大切さ。ロヒンギャ難民の惨状に目を合わせられないと正直に吐露する著者。現代の戦争・虐殺・迫害はハッキリそれと明示しない形で見せないまま進められ、見えないものは虫けらとして排除される。戦争をするにしても第一次世界大戦以後、空爆から始まり現代のドローン攻撃やイスラエルの入植地拡大、飢餓攻撃など加害側の身体的損傷がなければ罪悪感すらない手法が洗練され続けている。月並みな言い方になるが、現実感を喪失した地獄の時代が今。それに抗するためこうした本を読み想像力を保つことが必要である。2025/07/28
きり
5
ロヒンギャの受難が、これでもかというほど書かれている。ニュースで何となくしか知らなかったが、それでいいのか?と思わせる一冊。ロヒンギャ難民は、ミャンマーで弾圧を受け、バングラデシュへと避難を余儀なくされる。1982年の国籍法の改正で、ロヒンギャ民族は除外されてしまい、移動、就労、結婚、医療が制限される。世界最大の“被差別集落”と、呼んでいいだろう。この事態の重大さに、日本人はもっと敏感に反応し、「ロヒンギャ難民」を一度でも検索してみて欲しい。食糧を得るため児童結婚、人身売買、武装勢力への参加……2025/06/30
みさと
3
ミャンマーで迫害されたロヒンギャの人々約百万人が隣国バングラデシュで身を縮めながら暮らす巨大難民キャンプ。そこではイスラエルの虐殺に晒され続けるパレスチナへの連帯があちこちで表明されている。難民自身による保健衛生・啓発活動が活発に行われている反面、ギャング集団による犯罪・抗争が後を絶たない。生まれた国で国民とされず、祖父母が耕していた田畑を知らず、先祖の文化・伝統から切り離され、教育の機会を奪われた人々。どうしたら人間の尊厳を保てるのか。目を背けたくなるのをあえて見る。私たちは何ができるか。問い続ける。2025/07/18
モビエイト
1
ロヒンギャ問題のことを改めて調べてわかりました。日本での報道が少ないので、あまり大した事とは思っていなかったので驚きました。2025/06/08