内容説明
揺らぐアイデンティティ。貧困、虐待、差別。
彼らはなぜ道を外れていくのか。
外国人労働者2世たちの「裏の社会(パラレルワールド)」を追った衝撃のルポ。
これが、あなたの知らない「日本のリアル」だ!
パキスタン、バングラディシュ、イラン、ブラジル、ペルー、コロンビア、中国、ベトナム、ネパール……1980年代以降、多くの外国人労働者を受け入れてきた日本。移民2世であるその子どもたちは、貧困・虐待・差別といった多種多様な困難に直面。過酷な世界で生き延びるために道を外れ、犯罪に手を染める者たちがいる。自らに流れる「血」のアイデンティティを求め、つきつけられた理不尽への異議申し立てをするかのように、移民2世たちが作り上げた、現代日本の「裏の社会(パラレルワールド)」。日本人には想像もつかない、その実態を克明に描き切った衝撃のルポ。
(目次)
第一章 外国人ギャングというコミュニティ――ブラジル 、ペルー
第二章 外国人パブの子どもたち――フィリピン
第三章 成り上がった殺し屋の息子――コロンビア
第四章 日本鬼子(リーベングイズ)と呼ばれた男の生き様~中国
第五章 不良移民の最前線――ベトナム
第六章 差し伸べた手は届くのか――児童福祉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
72
近所の古着屋に行くとよくアジアの女の子達を見ることが多くなった。そういえば、知り合いの縫製工場でもスーパーでもフィリピンやベトナムの技能実習生を雇っている。一昔前は水商売のお店に、ダンサーやシンガーのビザで来日する人が多かった。時代や祖国の政治状況や日本の景気で変わる日本への移民、そして生まれる犯罪。今や祖国への連絡も取りやすいし、フェイスブックなどで、つながりやすいのかな。30代、異国の人が多い職場に勤めたのもあり、興味深くその歴史を読んだ。だけど日本はまだそんなに、憧れるほど豊かな国なのかとも思った。2025/06/26
読特
44
ブラジル、ペルー、フィリピン、コロンビア、中国、ベトナム。生まれ育った国から様々な事情で日本にやってくる。思わぬ報酬の少なさ。行けば天国のはずが、来てみて地獄。苦しい暮らしの中でも家庭を持つ。貧困と差別に苛まれ、子が育つ。暴力に目覚め、薬を知り、不法な商いを始める。同じ境遇の仲間が集い、裏の社会を形成する。人生の展望はない。生き残ることだけを目的に生きる。…外国人労働者の数は230万人。ただ、安い働き手が欲しいだけのために受け入れる。崩れゆく秩序。果たして、この国はいつまで先進国であり続けられるのだろう。2025/06/10
TATA
35
節目の2000冊目はなかなか考えさせられる日本の移民問題についてのルポタージュ作品。ブラジル、ペルー、コロンビア、ベトナム、フィリピン、中国からの移民やその二世の苦難に満ちた生活とその背景を解きほぐし、日本の移民政策を糾弾。移民に対する警戒的な論調はよく目にするが、いつの間にか日本には数多の移民が生活拠点を有するに至っていて、同化、協調さえできずにアンダーグラウンドに落ちていく移民社会の厳しさが理解できます。国毎の特徴なども丁寧に調査してくれて日々のニュースの受け止め方も変わりうる力作です。2025/05/25
つまみ食い
8
選挙の前から読み始めたけども、結果としてこの参院選の後だからこそ読みたい一冊に...2025/07/26
そ吉
6
日本社会の担い手として外国にルーツを持つ人が一定数いることは最近に始まったことではない。 では何故最近になって特にクローズアップされるのだろうか?本書は様々な歴史的背景や個人事情で日本を生活の場とする人々のルポを通して日本社会そのものを考えさせられる。 近年の海外からの移住者(当時は難民とか残留帰国者とか別の言葉を使っていたが)そのものは半世紀からの歴史があるが、今日の様に様々な文化や就労形態があったわけではない。本書にも「四角い箱に丸いものを入れる行政」のあり方は時代に合わないのだろう。★★★★☆2025/07/25