ちくま新書<br> 「東大卒」の研究 ――データからみる学歴エリート

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ちくま新書
「東大卒」の研究 ――データからみる学歴エリート

  • ISBN:9784480076786

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内容説明

学力格差や体験格差が深刻化する日本の教育。そんな中、入試難易度や威信という点においてトップに君臨しつづける東京大学に進学するのはどんな人たちなのか。学歴エリートはどこからきてどこへ行くのか。中高一貫男子校出身者の多さや地方女性の少なさの実態、親の学歴、家庭環境や文化経験、卒業後の職業・年収・役職、結婚や子育て、そして社会意識や価値観まで。東大卒業生を対象に行われた大規模な独自調査のデータから明かされる、学歴エリートの生態と格差社会のリアル。 【独自調査から徹底検証! データから読みとく学歴エリートの実態】こんなに多い!中間一貫男子校出身者/幼少時の読者や文化経験は?/地方女性という困難/親の学歴はどう影響している?/就職・年収・役職/「東大女性は結婚できない」は本当?/学歴エリートの偏った社会意識……

目次

序章 「東大卒」は日本社会の何を映しているのか 本田由紀/重なり合う象徴としての東京大学/知的優秀さの象徴としての東大/東大卒業生の社会的地位/東大の研究力は高いのか/東大に凝縮される「教育格差」/東大におけるジェンダーギャップ/闘争・運動・抵抗の宿る場としての東大/日本社会の現状と「学歴エリート」としての東大/東京大学を対象としたこれまでの調査など/東京大学卒業生に対する調査の概要/本書の構成/統計用語の解説/第一章 「地方出身東大女性」という困難──出身地格差とジェンダー格差 久保京子/東大生の地域・性別の偏り/なぜ「地方女性」に着目するのか/東京大学の地方女性を調査することの困難/分析に用いる方法/親学歴における地方と東京圏の格差/フルタイム率が高い地方女性の母親と無就業率が高い東京圏女性の母親/文化的資源の豊かな東京圏女性とそれを追いかける地方女性/地方女性の親子関係/読書量の多い地方女性、海外経験がダントツに多い東京圏女性/友だちは多くないが交際経験のある地方女性/誰に東大進学を勧められたか/地方女性の特徴/地方女性の困難/女性が少ないことや地方学生が少ないことへの問題意識/まとめと提言/第二章 東大生の学生生活──「大学第一世代」であるとはどういうことか 近藤千洋/大学進学は教育格差の終わりか? /見過ごされたマイノリティとしての大学第一世代/大学第一世代の東大生は「男性」「地方出身」「共学出身」に多い/「東大に入学した理由」に見る大学第一世代の不利/大学第一世代は「実利志向」が強い? /東大に馴染めたのは誰か/ハラスメントや差別を受けやすいのは誰か/学業にはどう取り組んでいるか/課外活動にはどう取り組んでいるか/誰が・どんな人脈を形成しているか/学生生活の「大きな分断」/“不器用”な大学第一世代は就職活動でも不利? /まとめと提言/第三章 東大卒のキャリア形成──学歴資本は職業的地位にどうつながるか 本田由紀/「学歴エリート」の職業キャリアとは/就労状態と雇用形態──働き方の分布はどうなっているか/職種──どんな仕事をしているか/役職──どのくらい「偉く」なっているのか/勤務先の規模──大企業に就職しやすいのか/転職経験──内部労働市場にとどまっているのか/収入──高い報酬を得ているのか/仕事の性質──どのように感じながら働いているのか/仕事における自身の性別の有利・不利/学歴資本は有効か/まとめと提言/第四章 東大卒の家族形成──だれと結婚し、どんな家庭をつくるか 中野円佳/3つの問い/東大卒の女性は結婚できないというのは本当か? /女性の東大卒業生の結婚相手は半数程度が東大卒/東大卒業生の出会い/東大卒業生が結婚相手選びで重視したこと/東大卒業生の子どもの数/仕事と子育てを両立してきた女性の卒業生たち/東大卒業生の子育て、階層は再生産されているか/東大卒業生を親にもつ子どもは受験をしているか/まとめと提言/第五章 東大卒は社会をどう見ているか──自己責任論、再分配支持、社会運動への関心からジェンダーギャップ認識まで 九鬼成美/なぜ東大卒の社会意識を分析するのか/なぜ格差や不平等に関する社会意識の分析が必要か/東大卒業生を育む学び、学び方、課外活動/東大卒業生はどのような社会意識をもつか/「自己責任意識」はどのように育まれたか/「再分配支持」はどのように育まれたか/「社会運動への関心」はどのように育まれたか/「ジェンダーギャップ認識」はどのように育まれたか/東京大学の学びや生活以外の社会意識への影響/専攻と学び方で育まれる社会意識は異なるか/まとめと提言/おわりにかえて──座談会 「東大卒」を考える

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

82
東大生は日本最高学府で学ぶエリートであるが、本書でやや偏りのある学歴集団であることを再認識した。五章の其々に東大生に関するテーゼを検証するデータ分析とまとめがあり、課題と提言が示されている。特に東大生の女性の割合が20%程度であり、その中の地方出身者にスポットを当てた第一章でのマイノリティとしての地方出身女子東大生の困難とアファーマティブ・アクションへの理解不足や、第二章で両親とも四年制大学を出ていない大学第一世代の学生の実像と今後の支援への課題は、今後多様性をどう取り入れるかの試金石になるように感じた。2025/07/20

よっち

30
トップに君臨し続ける東京大学に進学するのはどんな人たちなのか。卒業生を対象に行われた大規模な独自調査のデータから明かされる学歴エリートの生態と格差社会のリアル。中高一貫男子校出身者の多さや地方女性の少なさの実態、親の学歴、家庭環境や文化経験、卒業後の職業・年収・役職、結婚や子育て、社会意識や価値観、そして東大が取り組んでいることまで、様々な分析を通して地方出身東大女性や大学第一世代が置かれている困難さ、東大卒のキャリア形成や家族形成、東大卒は社会をどう見ているかなど、いろいろなことが浮き彫りになりますね。2025/05/05

ひと

15
東大卒業生をこれまで多かった主観的なケーススタディではなく、データに基づいて統計的に分析されているところが興味深い。著者も指摘しているように、任意のアンケート回答なのでサンプリングバイアスがある可能性があるのが残念。なんとか東大卒業生の分布を反映したデータ収集ができないものか…。分析手法も丁寧に説明されていて、統計データをどのように読むかの勉強にもなり、エビデンスとは何かを考えるきっかけにもなる。意識していなかったが、学生の家庭の背景や出身地によって階層が生じている可能性は確かにその通りかもしれない。2025/08/12

sk

9
東大卒女性は平均より結婚できている2025/04/26

ケンミ

5
本書は東大を「学歴エリート」を産出する典型的な機関と位置付け、ほぼ初めて行われた東大卒業者への包括的な社会調査を元に、日本の学歴エリートの実像を明らかにすることを試みる。特に第一章、第二章は私にとって自分ごとの問題であり、興味深く読んだ。かつての経験からfirst generation の概念については知っていたので、日本ではほぼ議論されていないことに驚いた。また3章の東大卒の仕事、4章の東大生の結婚の部分は、それぞれステレオタイプに一石を投じる内容なのではないかと思う。今後さらに研究されることを願う。2025/05/15

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