動きだした時計 ベトナム残留日本兵とその家族

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動きだした時計 ベトナム残留日本兵とその家族

  • 著者名:小松みゆき/白石昌也/他多数
  • 価格 ¥2,750(本体¥2,500)
  • めこん(2025/03発売)
  • ポイント 25pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784839603212

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内容説明

40歳を過ぎてベトナムに移り住んだ日本語教師の女性と、第2次世界大戦後も帰国せずにベトナムに残った日本兵とその家族たちとの30年におよぶ交流の記録。
著者小松みゆきさんは1992年にハノイに赴任。2001年に認知症となった母親を日本から呼んで同居を開始。その大変だけどちょっと愉快な日々は2015年に松坂慶子さん主演「ベトナムの風に吹かれて」として映画化されました。彼女は新潟の田舎育ち。昭和の貧しくアナーキーな青春時代を駆け抜けてきた魅力的な個性の持ち主です。一方、日本兵たちは戦後ベトナムの抗仏戦争に協力しベトナム人女性と家族を持ちますが、ベトナム政府の方針転換により日本へ単身帰国することになり、残された家族は一転して迫害を受けるようになります。
おたがい社会からはみだした境遇だったから引かれるものがあったのか、その後30年にわたって小松さんは残された家族の相談相手、日本に戻った元兵士たちとの橋渡しを務め、認知症の母も同世代のベトナム人妻たちと仲良くなったりします。それにしても不条理に残されたベトナム人の妻たち、子供たちは、なぜ日本に戻ってしまった夫、父親を恨みもせずに想いつづけるのか。共感、怒り、感動…多くの人に読んでもらいたい1冊です。

目次

まえがき

残留日本兵家族との出会い
  一九九二年、ハノイ
  ソンさんの回想
  手紙

残留日本兵家族と私
  ほかにもいた「コンライ」たち
  同世代の私
  特別な国
  「姉ちゃんがやってあげるよ」

父たちの歳月
  調査開始
  残留日本兵とは
  帰国、その後
  日越の架け橋に
  呉さん、帰国できなかった残留日本人

スアンさんと家族の歳月
  私はハルコ
  残された家族

ロックさんと家族の歳月
  日本からの人探し依頼
  高澤さんとの暮らし
  残された家族
  「父の愛した妻」

ズンさんと家族の歳月
  始まった文通
  親子対面
  タチバナさんの「戦争体験記」

Baちゃんが来た
  認知症の母を引き取る
  ソンさんの父は
  Baちゃんとの日々

伝える責任
  二〇〇四年、「ベトナムの蝶々夫人」
  NHKドキュメンタリー始動
  スアンさんの夫清水さんを訪ねる
  ドキュメンタリー放映
  残留と帰国の理由

近づく心の距離
  清水さん訪越、スアンさんとの再会
  「お父さんの国が大変だ」
  相次ぐ喪失
  映画と母の死と

父の国へ
  二〇一七年、天皇皇后両陛下訪越 
  墓参の旅
  高澤さんのお墓が見つかった
  ズンさんの四国の妹たち
  スアンさん、分骨・その後
  ロックさん、動きだした時計
  「和」への想い

【解説】

「新しいベトナム人」の時代背景 白石昌也(早稲田大学名誉教授 日本ベトナム研究者会議会長)
  日本軍がなぜ終戦時点にベトナムに駐屯していたのか?
  一部の日本兵が終戦後もなぜベトナムに残留することになったのか?
  残留兵の多くが参加することになった「ベトミン」とはどんな組織だったのか?

残留日本人の日本帰国の背景    古田 元夫(日越大学学長)
  「ホー・チ・ミンの国」から「ソ連・中国圏の国」へ
  国民共同体の開放性
  中国顧問団

加茂徳治さんのお墓探し  坪井善明(早稲田大学名誉教授)
  簡単ではなかった墓参の旅
  加茂徳治さんの足跡
  建国への貢献で勲章
  お彼岸に現地へ
  御影石の墓
  チャウさんと会う
  「ひとつも恨んでいない」
  宗建寺再訪、平和は尊い

二つのドキュメンタリー 栗木 誠一(NHK国際放送局多言語メディア部チーフプロデューサー)
  二〇〇四年、番組作り開始
  残留日本兵本人に会う
  残った「帰国の謎」
  「父の国」への想い
  一二年後の続編
  ドキュメンタリーが生まれた

【資料】
レ・ティ・サンさんの手記

タチバナさんの「戦争体験記」と「手記」
  タチバナさんの「戦争体験記」(二〇〇一年)より
  タチバナさんの帰国後の生活(小松への私信より)

タチバナさんから家族への手紙(一九五四年)
  妻ミン宛 一九五四年一〇月二〇日  
  長男タイン宛 一九五四年一〇月二〇日
  バー宛 一九五四年一一月一一日
  妻ミン宛 一九五四年一一月一二日 
  ミンとタイン宛 一九五四年一一月一二日
  ミンとタイン宛 一九五四年一一月二五日

呉連義さんの手記による「ホクタップ」


あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Mc6ρ助

10
「皇后陛下御歌 三首 平成二十九年」のうち「旅」と題する一首。「『父の国』と日本(にっぽん)を語る人ら住む遠きベトナムを訪(おとな)ひ来たり」1945年終戦の時にベトナムに残った日本兵(人)たちがいた。ホー・チ・ミン率いるベトミン(ベトナム独立同盟)の一員としてインドシナ戦争を戦い現地に家族を持ったという。1954年に至り中国と関係を深める北ベトナムから家族帯同を許されず帰国し、妻や子どもたちは残された。日本人の子と差別を受けるなど、時代に翻弄された人々との著者の交流の記録。心揺さぶられる読書、好著。2020/09/27

貧家ピー

9
太平洋戦争後もベトナムに残り、家族も設けるも帰国したベトナム残留日本兵家族を追う記録。 ほとんど説明もなく去った夫や父を数十年に渡り想い続けるベトナム人家族の気持ちに胸を打たれる。 元日本兵たちが、なぜ家族を残して帰国しなければならなかったかという疑問について、ベトナム史研究者たちの解説・当事者の手紙から、中国の存在・冷戦の影響を大きく受けたのであろうと推測でき、納得できた。 元日本兵、残留家族共に歴史の流れに翻弄された被害者と言えるかも。2020/11/05

ぽけっとももんが

7
過日読んだ「ベトナムの風に吹かれて」は認知症のご母堂を自分が住むベトナムに呼び寄せた顛末だった。大変そうではあったものの、敬老精神が根付いている彼の国での二人暮らしは興味深いものだった。その中で小松氏が奔走していたのがこの、ベトナム在留日本兵とその家族の問題。これだけの活動をしながら母親の介護をしたり、もちろん生計を立てるための仕事もあるだろう。読みやすいわけではないので、先に「ベトナムの風に吹かれて」を読んでおいてよかった、と思ったけど考えてみればあれを読まなかったらこちらを知ることもなかったんでした。2020/12/09

博多のマコちん

7
素晴らしい一冊。著者の小松みゆきさんのアクティブな活動に圧倒されて、すぐには感想を記すことができませんでした。前著「ベトナムの風に吹かれて」も小松さんへの声援を送りたくなる印象強いものでしたが、本著は少し年上の小松さんの若い頃を含めた人生に、同時代を生きた者として大いなる敬意を抱きました。2年前、現上皇ご夫妻が訪越時に「残留日本兵家族」と面談されたことはマスコミで大きく報じられて関心を持ちましたが、それを実現させた当事者が小松さんであり、彼女の長年の活動があったればこそだったのです。2020/08/24

ちゃーびん

5
★★★★☆

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