内容説明
開高健が翻訳者に明かしていた著作への思い。
『輝ける闇』や『オーパ!』などで知られる開高健は、『夏の闇』などを翻訳したセシリア瀬川氏と、翻訳にまつわる質問と回答などで頻繁に手紙を交わしていた。
内容は語句の説明や日米の言い回しの違いなどが中心だったが、次第にプライベートな部分にまで及び、開高は著作にかける思いや思うように書けない悩み、趣味のこと、病気のことなどまでありのままに瀬川氏に打ち明けていた。
これまで知られていなかった開高文学の真実と開高健の素顔を、177通の往復書簡を通じて明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
優れた小説で読者を感嘆させる作家も、裏を返せば「俗物に見えない俗物」なのか。立派な意見を述べたり名誉など気にしない風を装いながら、実際は名誉と高い評価を渇望する。特に芥川賞を争った大江健三郎が海外で日本文学の代表者と見なされていただけに、開高健は強く焦っていたようだ。アメリカ在住の翻訳家には気を許したのか、家族や編集者には絶対秘密の本心を手紙で明かしている。翻訳本を出さない米出版社や酷評する批評家を罵倒し、ノーベル賞獲得工作を考えるのだから。そんな実像を最後まで隠し通した開高は、不器用な昭和の男に思えた。2025/05/21
せどりっく
3
瀬川さんが羊羹もお茶も好きじゃないので要らないです!困ります!って言ってるのに. 開高健ずっと一所懸命とても重い虎屋の羊羹とお茶を航空便で送ってるの面白かった笑 「あなたにムダ遣いをするといってお叱言の手紙をもらったことをよくおぼえていますが、コリもしないでおなじことをしたわけです。男って不器用なもんですよ。」 とても優しくて面白いおじさんだったんだろうなってひしひしと感じる本でした。 この本も瀬川さんの名前表紙に書いてないね。輝ける闇の英語版出た時に瀬川さんの名前だけ記載がないって手紙に書いてあったのに2025/05/13
NAGISAN
1
翻訳者の名前は、セシリア・瀬川・シーグル(瀬川淑子)さんとのこと。過去、翻訳者の名前に関心を持つこともなかったし、初めてお聞きした名前である。2016年に開高健との書簡が公開されて以降、新たに発見された書簡を含め177通をもとに、著者が分析された。ほんの数回だが開高健先生のお話を聞いたことがあるが、こんなに筆まめで人間臭い低姿勢な姿は始めて。と言って、開高文学の偉大さが損なわれることはない。できれば、そのような手紙も掲載していただきたかった(ないのかも?)。瀬川さんの著作も読んでみようと思う。2025/07/22