岩波新書<br> ヒトとヒグマ - 狩猟からクマ送り儀礼まで

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岩波新書
ヒトとヒグマ - 狩猟からクマ送り儀礼まで

  • 著者名:増田隆一【著】
  • 価格 ¥1,012(本体¥920)
  • 岩波書店(2025/03発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320593

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内容説明

生態系の頂点に立ち,近づきがたい野生動物ヒグマ.ヒトはいつどのような進化をたどってユーラシア大陸でヒグマと出会い,なぜ文化的に共存することになったのか? ヒグマの動物学的・生態学的な特徴から説き起こし,時代と地域を超えた進化上の展開を追い,クマ送り儀礼に見る人間と自然との豊饒な文化の意味にまで迫る.

目次

はじめに
第1章 ヒグマとはどんな動物か
1 ヒグマは陸生の大型食肉類
2 どこに分布しているのか
3 どんな生活をしているのか
4 ヒグマにはどんな仲間がいるのか
第2章 ヒグマは生態系でどんな役割を果たしているのか
1 森林生態系の頂点に立つヒグマ
2 海と森の間の物質循環を仲介するヒグマ
3 森を広げるヒグマ
4 生態ピラミッドでの位置づけ
5 ヒグマと人間社会
第3章 ヒグマはどのようにしてヒトと出会ったのか
1 ヒグマはどのようにして分布を広げたのか
2 ネアンデルタール人はヒグマと出会っていたのか
3 ホモ・サピエンスとヒグマとの出会い
4 北方民族文化のなかで生き続けるヒグマ
5 言語地理学とヒグマ
第4章 狩猟からクマ送り儀礼へ
1 ヒグマの冬眠と春の覚醒は死と再生を象徴する
2 カムイ界と人間界を結ぶヒグマ
3 クマ送り儀礼の起源と発達
4 二つのクマ送り儀礼――狩猟型と仔グマ飼育型
5 狩猟型クマ送り儀礼の範囲と文化圏
6 飼育型クマ送り儀礼はなぜ極東で発達したのか
7 仔グマに対する価値観の共有が人々の絆を強める
第5章 ヒグマの夢は何を意味するのか
1 口承文芸のなかのヒグマ
2 夢のなかのヒグマは何を意味するのか
3 意識と無意識を結ぶヒグマ
4 クマ送り儀礼は文化的に記憶されたのか
5 精神的な感受性と寛容性とは
終 章 ヒグマ文化論――人間と自然の共存を考える
1 ヒグマに関する二つのとらえ方
2 ヒグマへの親近感と神秘性
3 ヒグマ文化論の展開
4 「社会―生態システム」を尊重するソフトパワーの必要性
おわりに
参照文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

120
ヒグマによる獣害報道はよく聞くが、ヒグマ自体については何も知らなかった。ヒグマはどんな生態系を持ち、どのように人の文化や生活に関わってきたのかあまりに無知だったと思い知る。ヒグマの冬眠と目覚めが死と再生の象徴と捉えられ、天上界と地上界を行き来する動物と見なされた。この結果、アイヌのクマ送りの儀礼をはじめ北半球でクマを主題とする口承文芸が発達したという。ここまで人と深い精神的関係を結ぶ生き物は、犬猫や馬ならともかく野生動物では他にない。同じ国に生きるものとして、もっと日本人はヒグマの実態を知らねばならない。2025/05/25

skunk_c

62
北海道には50回は行っており、大概の動物は見たがヒグマだけは有珠山ロープウェイの隣にあるクマ牧場で見ただけだ。ツキノワグマは東北の路上で2度ほど見たが。そんな北海道のヒグマについて、北海道大学で「ヒグマ学入門」を長らく担ってきた著者が、その生態や世界における分布から、イヨマンテとして知られる熊送りの儀礼のユーラシアでの広がり、さらには心理学にまで踏み込んだ「ヒグマ文化論」を展開する。推察も多いが自然科学者らしく丁寧に説明しており、無理な推論ではなく興味深い説として読めた。会いたくはないが自然個体を見たい。2025/06/22

kuukazoo

16
著者は動物地理学、分子系統進化学が専門で長年北海道大学で「ヒグマ学入門」の授業を担当。「ヒグマは、ヒトとの物理的距離こそ遠くありたい動物だが、精神文化的には極めて近くて深遠な動物」とはなるほどである。動物学的分類、生態系における役割、ミトコンドリアDNA分析による地理的分布、大陸移動の歴史、古代人類との関わりから、クマ送り儀礼や仔熊を介した異文化交流や象徴としての熊など文化面まで幅広く解説。オホーツク文化についてもっと知りたくなった。専門外の部分は想像が豊かすぎたりざっくりな感じだがそれなりに興味深い。2025/04/29

フク

16
#読了 クマ送りの儀式はユーラシアの北部で共通していると言うことが興味深かった。 〈ヒグマを単に危険で怖い動物としてとらえるのではなく、自然現象そのもの、生態系の一部としてとらえることが大切である〉 図書館2025/04/28

ろべると

9
これはいい本だ。著者は北大でヒグマ学!を教えていた人。北海道のヒグマは3つの時期に大陸から渡ってきて、道内の異なる場所に棲みついたというのも興味深いが、後半はヒトとヒグマの関わりを論じている。ヒグマとヒトは生態系の頂点に立ち、ヒトにとってヒグマは出会いたくない相手だが、神様の使いとして畏敬の念を抱く対象であり、またその肉は貴重な栄養源でもあった。そこからイヨマンテのような飼育型クマ送りの儀式が、日本以外でも行われていたそうだ。ヒグマ文化論。ヒトとヒグマは、ともに自然界の一員なのだという認識を新たにする。2025/07/01

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