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内容説明
私は長く、藤沢作品の一読者であったが、別段、作品がそのときどきの人生的テーマに解を与えてくれたことはない。教訓的作品として読んだこともない。覚えてきたのは、静謐な物語と文体が体内の深い部分に触れてくる感触である。空洞をふさいでくれるごときものを覚える折もあった。癒されていたのかもしれない。(本文より)
歳月が持つ哀しみ、自分なりの小さな矜持、人生への情熱、権力の抗しがたい美味と虚しさ、喪失感――時代(歴史)小説を舞台に、静謐な文体で人の世の「普遍」を描き続けた作家、藤沢周平。ノンフィクションの名手が、その人と作品の魅力に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
121
藤沢周平の評伝は何冊か出ているが、文学的に批評したり目新しい伝記的事実が付け加えられた著作はない。むしろ藤沢の生涯を辿りながら、作品との出会いや感想を語りたくて書いたような本ばかりだ。本書もその種類に属するが、そうした本を多くの人が出したくなる作家は他にいない。数多い江戸期の地方の藩を舞台にした時代小説の中でも、なぜ自分が藤沢作品に惹かれるのか理由を確かめようとしている。英雄や成功者ではなく敗残者や挫折者、血統でなく実力で這い上がった者の苦闘や諦念に、多くの現代人が共感するものを見い出しているのがわかる。2025/05/09
trazom
107
私は、藤沢全集を読むような熱心な読者ではなかったから(読んだのは文庫本で十冊程度)、後藤さんが、主観的な批評を極力排し、時系列的に、作品の内容の紹介に徹する姿勢で本書を構成して下さったことが大変ありがたい。そうやって振り返ると、私は、「用心棒日月抄」や「隠し剣」などのシリーズ物より、時代小説の形を借りた私小説としての初期の作品と、晩年に到達した「蝉しぐれ」「漆の実のみのる国」の境地が好きだったんだと実感する。藤沢さん独特の静謐な文章の引用がたっぷりで、久し振りに、透明感のある藤沢さんの世界を満喫できた。2025/09/01
チェアー
7
ノンフィクションかと思いきや、文芸批評的な作品だったのは意外。藤沢周平の作品を丹念に追い、藤沢の生きてきた道を一緒に歩く。そんな本だった。 女性の描き方には限界がある。一つは江戸時代という限界。もう一つは作者の限界。強い女性を描いても、それは「女らしさ」の範疇にある強さであるように見える。2025/09/04
naok1118
3
藤沢周平は読んだことがない。原作の映画を見たくらいだ。でも、この本は、藤沢の年代を追いつつ転機となる作品を紹介していてわかりやすい。何が分かりやすいかというと藤沢の狙いどころ。結構面白い作家かもしれない。ここで紹介された転機の作品を読んでみるか。こんな触れ方もあるのだ。2025/11/29
リラッママ0523
3
文芸批評というジャンルはあまり読んだことがなかったのですが、この本は藤沢周平の代表作数作しか読んだことのない自分をもたちまち藤沢ワールドに引き込んでくれました。小説のポイントを押さえつつ簡潔に要約するのは本当に難しいと思いますが、どの作品も藤沢作品独特の清々しい読後感を1冊読みきったかのように味わえるのです。藤沢作品の読解テストの答え合わせと解説をシャワーのように浴びせていただき大変しあわせでした。感謝します。私に藤沢周平を教えてくれた義父に、父の日にプレゼントして大変喜んでもらえました。2025/08/03




