創文社オンデマンド叢書<br> 螢草

個数:1
  • 電子書籍
  • Reader
  • 特価

創文社オンデマンド叢書
螢草

  • 著者名:結城信一【著】
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 特価 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 講談社(2025/03発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)

ファイル: /

内容説明

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

「縁側近くの庭先で泰山木が咲いている。梅雨曇りの思い空を支えて、木蓮に似た盃状のこの大きな白い花は、軒先から程遠からぬところで豊かな幅の広い花びらをひらいているが、匂いは溢れて、部屋の真中にぽつねんと坐っている私の皮膚にまで深くしみてくる。
木斛や松などと一緒に、東向きの縁側に沿ってならんでいるのだが、ここで花を見るのは始めてである。家へ入るのに、隣の家の向う横についている細い貝殻道を通って迂廻して来なければならない。その隣の家の門あたりまでくると、花の匂いはもう私に呼びかけてきた。
・・・
戦争中でもこのように穏やかだったのだろうか、と思った。
この内海の、平凡な、単調な風景は、自分の家の池のように親しいのであったが、長い戦争の歳月は、苛立たしいほどの空白を私に押しつけてくる。それはあまりにかたくなで、眼前のこの内海に対する私の感覚が、屡々錯覚であるかのような戸惑った思いを抱かせる。私は、なにやら違った歳月の中を歩いてきた旅人のように、遠慮深い眼で、久しぶりの海の青さに見とれていた。」(「序の章」より)
【目次】
序の章
轉身
螢草
柿ノ木坂
落落の章
あとがき
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。

目次

序の章
轉身
螢草
柿ノ木坂
落落の章
あとがき

最近チェックした商品