内容説明
世界が一変してしまったあの春、私たちは見てはいけないものを覗きこんでしまった――。持てる者と持たざる者をめぐる残酷なほんとう。死を前にして振り返る誰にも言えない秘密。匿名の悪意が引き起こした取りかえしのつかない悲劇。正当化されてゆく暴力的な衝動。心の奥底にしまい込んだある罪の記憶。ふとしたできごとが、日常を悪夢のように変貌させていく。不穏にして甘美な六つの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
163
全く異なるシチュエーションを描いていて、関係性も全くない3つの短編は、”コロナ禍”を匂わせる表現によって一つに繋がれていきます。”コロナ禍”の独特な雰囲気感に包まれていたあの鬱屈とした時代をリアルに映し取った6つの短編には、あの時代ならではの危うさと背中合わせな空気をひしひしと感じさせるそれぞれの『こわいもの』が描かれています。さまざまな表現の工夫に興味深く読んでいけるこの作品。”コロナ禍”が纏っていた空気感を上手く描き出すこの作品。“コロナ禍”のそこはかとない怖さを上手く背景に織り込んでいく作品でした。2025/08/10
ふう
75
短編6話。感想を書くのが難しくて、読み終えて2日たってしまいました。「ブルー・インク」高校生らしい繊細な感受性をもつ二人の関係が、あの突然の休校でどうなったのかと、あのとき、本人たちの意志と関係なく断ち切られたものがたくさんあったことを思い出しました。感染することはもちろん怖かったけど、日常が壊れていくことも怖く、そして、本当は日常の中にもっと怖いものがひそんでいたことを思い知らされました。春?人ですよね。2025/06/25
Vakira
52
春さんとの対談本を読んで、未映子さんが読者の気になる素敵な質問をしていたので急に未映子さん小説が気になり出した。取り急ぎ、最近のこの短編・掌編集をチョイス。で、物語の長さについて思いを馳せる。生き物の魂として、メタファーを考える。普通の本を一人の人間とすると何冊にも渡る超長編は鯨だ。上下巻なら象。短編は犬や猫。では掌編は昆虫。一寸の虫にも五分の魂。掌編にだって魂はあるはず。今まで掌編は読み飛ばして感想なんか考えたこともなかったが、きちんと向き合って感想を書いてみようと思いたつ。2026/01/14
阿部義彦
43
新潮文庫、ほやほやの新刊です。久々の文芸ものかも知んない。これは、作家さんも好きだし、表紙のデザインが秀逸(名久井直子)そして、最初の頁に大島弓子の「バナナブレッドのプディング」からの有名な台詞が!『すべて真夜中の恋人たち』は大好きな小説です。『黄色い家』は未だ読んでないよなー、などと独りごちる。6つの短編です。「あなたの鼻が~」とラスト「娘について」が印象的。前者はルッキズム、後者は同族嫌悪についての、えぐい程のこわい話でした。薄い本ですが、かなりの猛毒です、心して読んで下さい。2025/04/03
みねね
34
はっきり言ってちょっとこれは微妙ですね!町田そのことか、村上春樹とか、井戸川射子とか、読んでいるとそういう人たちが浮かんできて、残念ながらそれらを超えられない。「〇〇っぽい」雰囲気を出すのは超一流なのだが、本作はそれを支える物語上のリアリティのなさから、かえって小説の本質を遠ざけてしまっている。これは致命的だ。唯一全編通してよかったのは「娘について」で、主人公が未映子に近いから、作者本人の言葉が感じられてよかった。やっぱりこういう方面で勝負をかけていく方がいいのではないだろうか?2025/08/29




