ちくま学芸文庫<br> 増補 アルコホリズムの社会学 ――アディクションと近代

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ちくま学芸文庫
増補 アルコホリズムの社会学 ――アディクションと近代

  • 著者名:野口裕二【著者】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 筑摩書房(2025/02発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784480512734

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内容説明

ひとはなぜアルコホリズム(アルコール依存)に陥るのだろうか。原因を「意志の弱さ」に求めていては何も解決しない。自分の意志ではどうにもできないと認めることが回復への第一歩となるのだ。そこから見えてくるのは、「自らの意志で欲求をコントロールする主体」という、近代社会の理想的人間像である。アディクション(依存症)とは、そうした近代的あり方の綻びが露呈したものに他ならない。だとすれば、回復への道は近代合理主義が切り捨ててきたものの中にこそ見出し得る──。ベイトソンやギデンズの思想に依拠しつつ、アディクションを社会学的に解明した先駆的名著。

目次

序章 アルコホリズムへの社会学的接近/1 逸脱論的アプローチ/2 医療社会学的アプローチ/3 臨床社会学的アプローチ/4 近代社会論的アプローチ/5 アルコホリズムの社会学のために/I 逸脱と医療化/第1章 アルコホリズムとスティグマ/1 なぜスティグマをともなうのか/2 「意志の病」というスティグマ/3 「意志の病」というフィクション/4 スティグマと回復/第2章 アルコホリズムの医療化/1 米国におけるアルコホリズムの医療化/2 現行医療体制の特徴/3 医療化と脱医療化/II セルフヘルプ・グループ/第3章 家族療法としての断酒会とAA/1 断酒会とAA/2 家族の役割と位置づけ/3 「対称的関係」の病理/4 家族療法としての評価/第4章 セルフヘルプ・グループの機能/1 断酒会とAA──二つの共通点/2 「集うこと」の意味──代替機能と創造機能/3 「伝えること」の意味──援助者療法原理/第5章 セルフヘルプ・グループの原点:AA/1 AAの誕生と現況/2 12のステップ/3 12の伝統/4 セルフヘルプという思想/III 臨床社会学/第6章 集団精神療法/1 集団精神療法の有効性/2 集団精神療法の多様性/3 治療上の原則/4 セルフヘルプ・グループとの比較/5 治療者の役割/第7章 集団精神療法の微視社会学/1 集団療法の有効性/2 飲酒行動の変化過程モデル/3 ミーティングの構造/4 変化のメカニズム/第8章 地域ケアとネットワーク・セラピー/1 地域ケアの展開/2 地域ケアの特徴と有効性/3 ネットワークの重層性/4 ネットワーク・セラピー/IV アディクションと近代/第9章 共依存の社会学/1 イネイブラーから共依存へ/2 ためらいの理由/3 共依存型社会/4 共依存の社会学的意味/5 回復の意味/第10章 アディクションと近代/1 ベイトソンの示唆/2 ギデンズの示唆/3 「もの」から「ひと」への意味/4 自己というフィクション/5 再帰性とアディクション/6 「自己=アディクション」のゆくえ/V 補論/補論1 アディクションの社会学/1 ベイトソンの「無力」/2 ギデンズの「共依存」/3 ホワイトとエプストンの「外在化」/4 カーツの「スピリチュアリティ」/5 ナラティヴ・コミュニティ/補論2 オープンダイアローグとアディクション/1 アディクションとオープンダイアローグの違い/2 ネットワークセラピーとネットワークの機能/3 近年の新しい動き/4 反省点と今後の方向性/補論3 AAとスピリチュアリティ/初出一覧/あとがき/文庫版あとがき/解説(信田さよ子)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

綿

5
「コントロール可能な自己」という現代社会の価値観がアルコホリズム(ものへのアディクション)や共依存(ひとへのアディクション)の根幹にあり、回復には自己のコントロール不可能性を認めるしかない、しかし回復後に復帰する社会もまた共依存的であるのならば、という考察が非常に興味深い。「推し活」と呼ばれるような行為に熱中する人が多く見られる現代において、その行為もまたひとやものへのアディクションのひとつのあり方ではとここ数年考えていたけれど、その考えを深めるためのヒントになるような書籍でもあった。2025/05/29

袖崎いたる

4
よくもまぁ手にとったものよ。考えてることがあって、そのなかにお酒のトピックもあったんだわ。その線でどーかなぁと思って。そしたら、良かった。アルコホリズムを近代の病理と位置付ける発想はベイトソンやギデンズなどの目を通している。断酒会AAのアル中の人に対する無知の自覚ならぬ無力の自覚をうながすことの効用、またはアルコホリズムが近代以降の自己が負うこととなった再帰性の論理的必然として語られることなど、じつに玩味しがいがある。國分功一郎が意志をヤクだと説いたのとも響き合う。そのヤクを手放す勇気に「神」は位置付く。2025/03/09

ポルターガイスト

3
臨床を中心にアルカホリックの社会学的分析を行う。とてもよかった。特に終盤の展開は鮮やかで感動した。単なる文明批評にとどまらない社会学の有用性を感じ,誰しも読めば言いたいことがわいてくるタイプの古い本だった。俺は自分が教員としてやりたかったことを思い出した気がする。それはプラグマティズム(この本では「再帰的(reflexive)」)による共依存からの脱却なのだろう。ただ本書によればプラグマティズムの人間関係への拡大や苦痛こそがアディクションの根源にある。凝り固まった俺の価値観に石を投げてくれる本だった。2025/07/27

Go Extreme

1
アルコール依存症はいつから病気になったのか 臨床社会学 医療化 社会病理 スティグマ 意志の病 精神病院帰り 偏見と闘う 最初の1杯の危険性 アルコホリックス・アノニマス 身体アレルギー説 コントロール喪失 無力 12のステップ 問題飲酒概念 共依存 イネイブラー ソーシャル・ネットワーク ネットワーク・セラピー 脱医療化 集うこと 代替機能と創造機能 援助者療法原理 酒なしの新たな生き方 否認の病 Co-dependency コ・アルコホリック 心理的転換 自己をモニターする近代人 酔いと覚醒の関係2025/04/15

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