内容説明
過去へのタイムトラベルが実現した世界。時間犯罪取締局(TEA)の元調査官ジャニュアリーは、タイムトラベラー特有の病気である時間離脱症(アンスタック)を患い、今は時空港(タイムポート)併設ホテルの警備主任をしている。アンスタックの症状で未来や過去を幻視してしまう彼女は、ある客室で時間の止まった男の死体を目撃し、さらに自らの銃殺シーンも幻視する。時空港買収の入札のためホテルに集まった四人の大富豪を狙った事件が次々に発生する中、ホテル内で時間の流れがおかしくなるなどの異常事態まで発生し……カーカスレビュー誌ベストSFF/NPRベストブック2022選出作。/解説=渡邊利道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
68
過去へのタイムトラベルが実現した世界。タイムポート併設ホテルで警備主任として働くジャニュアリーは時間犯罪取締局の元調査官。彼女は過去や未来を幻視するタイムトラベラー特有の病気・時間離脱症を患っている。ホテルでは買収に集まった4人の富豪が狙われる事件や時間の流れが乱れる異常現象が続く。そして彼女は未来を幻視する…時間の止まった死体に何者かに銃殺される自分。幻視が現実になる前に異常事態を止める事ができるのか?病気を抱えながらも絶望的な状況に敢然と立ち向かうジャニュアリー。中々ハードなSFだったが面白かった。2025/04/14
本の蟲
17
時間港併設ホテルの警備主任ジャニュアリー。ホテルでは時間旅行事業を買い取ろうとする大富豪が集まり、時間旅行全便欠航の影響で客室はパンク。過去未来を幻視するタイムトラベラー特有の病気のせいで、ジャニュアリーは自分にしか見えない死体を発見するが…。タイムトラベルが実用化した世界のサスペンス。時間旅行の秘密自体は期待したほどではなかったが、狂った時間軸で生きている主人公が、混乱のなか、執着とトラウマを乗り越える展開は良かった。あと富裕層の高慢で下衆い行動に、従業員がうんざりするところは大変共感できる2025/04/15
もち
16
「ひとくち食べてみたケーキは、素晴らしく美味で」◆時間旅行の拠点となるホテル。警備主任の女性は、過去と未来を幻視する病を抱えながら、サミットの準備に励む。静止した死体、襲われる富豪、幽霊の部屋。愛憎が積もるホテルで、彼女が辿り着く場所は。■堅いあらすじとは真逆の、疾走感溢れる傑作エンタメ。時空間が痛快に噛み合うミステリ、時の性質を問い直すハードSF、切ない愛に満ちた家族小説。ジャンルを巻き込み、驚いて疑って涙して、いつの間にか地平の最果てにいた。言い尽くせない余韻と叙情が、まだ心を震わせている。2025/03/19
アプネア
14
過去にのみタイムトラベルが可能になった近未来。時間離脱症という過去と未来の幻視に襲われる奇病に罹患したため、時間犯罪を取り締まっていた調査官から、ホテルの警備主任へと、転身した女性視点で描かれる。時間SFとミステリ要素、4つの陣営での暗闘など、結構好みの要素が詰まっていたけど、期待してたものとは、結構違ったなぁ〜。まあ、面倒くさい拗らせ主人公に、ホテルの従業員共々、最後まで付き合えるか、というところだろう・・・。2025/05/17
ノベツ
9
SFでもミステリでもなく自己救済のお話だった。しいていうとファンタジー。自分にしか見えない時の止まった死体というアイデアが良かっただけに残念。2025/06/03