内容説明
ぼくたちは遠く旅をする。星の囁きに耳を澄ます日々。詩人、バイオリニスト、天文学者……「宇宙」を夢見た少年たちの孤独な軌跡。――学校の裏山にぽつんと建つ摂知庵(せちあん)という奇妙な家。少年3人組はそこで神秘的な中年男と出会った。銀色のドームに籠もり、遠い星に思いを馳せる日々。「宇宙」に魅せられた少年たちはそれぞれ大きな夢を追いはじめた。しかし大人になって見上げる空は、ときに昏(くら)く……。切なくほろ苦い青春の果てを描く傑作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ntahima
34
所謂偏愛的作家である。きっかけさえあれば池井戸並みにブレークする筈だが敢えてその必要もあるまい。設定は処女作の、幼馴染の五人が有人火星探査を目指す『夏のロケット』に酷似している。但、本作はネガ!誰かに勧めたいかと言うとそうではない。特に『夏の~』に感動した人には勧め辛い。著者をずっと追っかけて来た人にだけ読んでほしい。人間という存在に何か意味を持たせたがる人も居るが生れたことに目的等なく、その生も一瞬の移ろいに過ぎないからこそ、人は自由であり掛け替えない存在たり得るのではないか?主人公とは同じ年に生れた。2012/08/15
はらぺこ
25
主人公が嫌いでした。結局何が言いたかったんやろ。2017/09/27
a*u*a*i*n34
10
寂寥感たっぷりの読後感です。カルトとオタクの間をすり抜ける様にしてデリバティブの開発で金持ちになった主人公の最後は寂しいばかりです。2020/09/02
NOBU
8
広大な宇宙に吸い込まれて脱け殻になったよう。せちやんも、第2のせちやんになった主人公もその人生は余りにも切ない。 宇宙からの信号の意味でさえ哀しい。夢に生きてもなぜか虚しいばかり。社会には救いがないのだろうか? 救われない読後感に困惑。2011/03/28
yamakujira
6
裏山に建つ奇妙な家を見つけた中学生3人組は、家主の中年男と出会う。通称せちあんこと摂津知雄は、社会から脱落して宇宙観察に没頭していた。変人に惹かれた3人は摂知庵に通い詰め~って、夏の思い出のような児童文学かと思ったら、3人とも大人になって直面した現実は、挫折、失恋、病死、事故死、失業、虚栄、破産と、あまりにもやるせない。でも、陰鬱なだけでなく、人生の本質を考えるような物語に心洗われるのは、自分が齢を重ねたからだろうか。若者ならば、こんな夢も希望もない話は読みたくないと思うかもしれないな。 (★★★☆☆)2016/06/13