内容説明
ダライ・ラマ14世の“Xデイ” / 韓流ムービーと朝鮮族差別 / ウイグル族と自民党 / チンギス・ハン争奪戦 / 清朝貴族の末裔の満族美人女優 / 愛国ブームで大儲けのチワン族社長 / 漢服ブームと反日動画 / 客家と陰謀論 / 福州人と対日インテリジェンス / 中国共産党の対沖縄工作……。
中国問題を知るカギは「民族」にある。
中国は漢族だけの国ではなく、56の民族で構成される多民族国家だ。さらに漢族の内部にも、客家人、広東人、福州人、潮州人と、文化や言語を異にするさまざまな集団が存在する。
彼らは現代中国の政治・軍事・経済・社会・ポップカルチャーの多様な面で顔を出し、日本社会にも大きな影響を与えている。他方、漢族の同化圧力のもと、彼らの一部は苛烈な迫害に晒されてもいる。
「中華民族の偉大なる復興」を旗印とする習近平政権は、彼らをどこに導くのか?
民族は、中国の行動原理を読み解く最大の鍵であり、無数の不都合な真実をはらむ暗部でもある。
現代日本の中国報道を牽引する大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が、中国の無数の「民族」たちの喜怒哀楽を描き、帝国化する大国の実相をえぐりだす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
94
中国は公式には56の民族を擁する多民族国家ということになっているらしい。勿論、約14億の人口のうち大多数、91%は漢族が占める。あとは少数民族ということになるが、中にはチワン族やウイグル族など1000万人を超える”少数民族”もいる。本書ではチベット族、回族、ウイグル族、朝鮮族、満族、ナシ族、チワン族、そして意味合いが多少違うが客家について取り上げている。一般向け新書にもかかわらず、各民族の歴史から現状まで、詳しくかつ大変わかり易く解説。中国共産党は建国当初は自治区や自治州を設置、少数民族の自治を⇒2025/12/05
岡本
69
Kindle。中国の各民族を紹介するだけかと思いきや、中国通の著者ならではの情報量であり、最後の纏めは流石の一言。各民族の歴史や現状が纏められており非常に分かりやすい。目論見通り中華民族としての統一はされるのか要注視。2025/07/09
skunk_c
68
この著者の本はそのタイトルから敬遠していたのだが、本書を読んで考えを改めた。丁寧な論考で歴史にもきちんと当たっているし、現地取材を含めた内容は興味深いものだった。しかも文章が読みやすい。中国に対する評価も警戒心を持ちながらも一方的にディスるようなものではない。特にウイグル人について読むと、日本国内で在日外国人を攻撃する「右翼」な人たちが擁護側に回るという奇妙な現象があるとか。これはこの著者の他書も読まねばという気にさせられた良書だ。ただし「あとがき」の沖縄独立については過去の系譜に触れられていなく残念。2025/04/14
ピンガペンギン
24
「民族」は和製漢語。中国語に逆輸入されて中国語でも定着した。1.「ネイション」2.「エスニック・グループ」中国には2の意味の民族が56ある。チベット族(460万人)、回族(1100万人以上)他の少数民族の実情を知れるが、本当に複雑で流動的な印象。ウイグル族は基本的人権を脅かされているが、日本では政治的なツールのようになり、自民党中枢部に食い込んでいる。イスラムのためチベット族ほどに欧米社会の関心にとどまりにくい悲惨な状況だという。朝鮮族は韓国に行くと差別の対象となり、大部分の人は低い収入にとどまっている。2025/08/05
さとうしん
20
近年動向が注目されるチベット族やウイグル族だけでなく、朝鮮族や日本人になじみのない回族やチワン族、更に漢族内のグループである客家や、中国の民族の総体とも言うべき中華民族も取り上げている。かつての漢人八旗なども含まれているという満族のあり方からは民族の内実の曖昧さがうかがえる。回族について漢人と回民の共存・反目の歴史を取り上げるなど、歴史性に着目するのは本書の特徴だろう。客家について巷間言われてることに実は根拠が薄いということや、民族服との絡みで漢服ブームについても取り上げられている。2025/02/12
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