内容説明
歴史の「洗礼」を受けた土地には、不思議なオーラがある。
たたずまいが微妙にちがうのだ。
考古学の常識をくつがえした岩宿遺跡、平家一門が波間に消えた壇ノ浦、徳川の天下を決した関ヶ原、忠臣蔵の四十七士の故里・赤穂、そして特攻隊が出撃した九州南端の知覧基地――。
好奇心のおもむくまま、由緒ある町を訪ね、古代から近現代まで、自由に時間を旅する。
歴史の魅力を堪能し、思索をめぐらした紀行エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
42
日本を石器時代から昭和まで思うがままに歩いた一冊。斯様に飄々とした足取りで案内されると、こちらまで駘蕩としたいい気分になってくるから不思議。案内される場所も壇ノ浦や関ヶ原といった有名どころから、柳田国男の故郷、メンソレ、秩父困民党等一風変わった所まで幅広い。こう読んでいくと、歴史とはその地理と切り離せないものであると同時に、その地方が歴史の重みで一層豊かになっているように思えた。ちなみに私の地元も紹介されているのだが、普段話題にならない所なのでこうして本になってみると、なんとなく面はゆいような気分になる。2013/10/05
黒猫
24
休みの日に読了。ちょっとした歴史のおさらいにちょうどよく、檀ノ浦、関ヶ原、高野山、会津、大本弾圧などの作者の散歩は本当に気まぐれだ。だから、気まぐれに好きなところは興味深かったし、あまり興味がないところは普通に読み進めた。読書をしながら散歩できたちょっとお得な気分だった。大本跡地や檀ノ浦や会津などは近くに宿をとってゆっくりぶらぶら散歩したい。あと、柳田国男さんが関西人だったとは初めて知りました。池内節が今一歩でやはり「今夜もひとり居酒屋」にはかなわないかな。春に散歩したい気にはなる。2018/01/08
さっと
8
限りあるお小遣いを有効に使うため、新刊書店では買い物しないようにしているのだけれど、目当ての吉川英治『黒田如水』を持ってレジに向かう途中で目が合ってしまい購入。気軽に『歴史散歩』と言いつつ、個人の感情や知識や歴史観がごちゃまぜになって妙におしつけがましい紀行文にぶつかることが多いなか、こちらは良心的な本である。取り上げられている歴史の現場のだいたいが、歴史の教科書の太字で見たことある事項だから、とっつきやすい。そして、作者の筆遣いもドイツ文学者というよりエッセイストのそれである。うまい。2013/10/13
オールド・ボリシェビク
5
2012年の刊行。雑誌「中央公論」連載の旅行エッセイをまとめた。登場するのは札幌から知覧までの26か所。その土地が持つ独自のオーラ、それは歴史によって刻まれたものであり、そのたたずまいをていねいにたどっていく著者の手際が良い。古代から現代まで、豊富な知識に裏打ちされた文章が滋味深くてよろしい。2024/09/20
ひよピパパ
5
歴史の現場を取材して書きつづられた随筆集。博識の池内先生とあって、歴史の捉え方は鋭く深い。関ヶ原の戦いで石田方は何故敗れたのか、赤穂浪士は浅野内匠頭の刃傷沙汰をどのように受け止めたのか、広島に原爆を投下する側にどんないきさつと思惑があったのか……。これまで知られている歴史の事実からさらに一歩踏み入って考える視点を提供してくれる。2017/11/08
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