内容説明
電子には「電荷」と「スピン」の二つの性質があるが、電荷だけが電気として利用されてきた。ナノテクノロジーの成熟で、スピン、すなわち磁石の源になる「自転」の成分が流れることがわかったことで、新しい物理法則の確立が急務になっている。スピン流の物理学は、量子コンピューターを含むIT、エネルギー、センシングなど、さまざまなテクノロジーを次のフェーズへ後押しするとともに、暗黒物質の検出や幻のマヨラナ粒子の発見など、科学の未解決問題の突破口を開く可能性も秘めている。
目次
第1章 スピンとは何か
第2章 電荷が流れる電流、スピンが流れるスピン流
第3章 利用するためには計測を
第4章 スピン流の物理学が始まる
第5章 物質の性質をコントロールする
第6章 トポロジカル絶縁体は実在するか
第7章 スピン流で新たな物理法則が拡がる
第8章 スピン流は社会をどう変えるか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん。
2
読みやすいです。一読を推奨いたします。2025/05/27
斉の管仲
2
面白いです。文体も良い。寺田寅彦のエッセイ風なところもあり、楽しく読めました。スピン流など、本質的な理屈は難しいけれど、内容は理解できました。科学者って感じの方です。2025/02/14
Go Extreme
2
スピン流の発見と研究ー物理学の新たな地平・情報技術の飛躍的進化と持続可能な未来社会の構築に貢献 スピン流の発見と定義: 電子にはスピンという自転のような性質 これが特定の条件下で流れる現象=スピン流 電荷を持たない情報の流れ 科学的意義: 電子機器の原理を根本から見直す 情報を電流なしで伝達できる物理現象 技術革新への応用: スピントロニクスとして次世代のエレクトロニクス技術へ応用 エネルギー効率の向上: 発熱が少なくエネルギー効率が高い情報伝達可能 持続可能な技術革新に貢献 科学的挑戦と新たな法則の探求2025/01/09
Hayato Shimabukuro
1
著者の齋藤先生は私が東北大で学んでいた時期から名前の知られた研究者でした。今回、齋藤先生の「スピン流」に関する一般向け著書が発売ということで手に取ってみましたが、知らないことばかりでした。そもそも「スピン流」という存在が初耳でしたが、実験的検証、さらには将来の応用可能性について幅広く紹介されており、非常に興味深かったです。とはいえ、実験のセットアップは門外漢には難しく感じました。2025/02/21
ハラペコ
1
電場と磁場はコインの裏と表のようなものである。電荷をもつ物質の中で最も豊富で自由である、電子自体の自転のスピン角運動量と、(原子核に対しての)軌道角運動量とスピン角運動量が織りなすスピン軌道相互作用の二つが主に話題となっている。これまでは大きさもエネルギーも減衰までの距離も小さすぎて測定しづらかったが、その実態と重要性が徐々に明かされているという。観測と客観性に、実生活ではおよそ感じないような不確かさがある量子力学に踏み込んでいるが、極力数式ではなく図解やイメージで解説されている。それでも6章は難しかった2025/01/08