内容説明
ロシア人亡命作家を追いかけ
クロアチア移民とおしゃべりし
イディッシュ語教室で人気者に――
一九八〇年代、ロシア文学専攻でありながら米国に学んだ著者。
東欧系移民や亡命作家たちとの交流から得た豊かな体験談を起点に、
亡命者・移民・多言語話者の文学や言葉を縦横に考察。
ロシア・東欧文学から世界文学まで広く論じてきた著者の原点たるエッセイ。
「ハーバード生活から、三つのエピソード」他を新収録。
解説
「いつも身軽に「大事そうなもの」を集めること」奈倉有里
ニューヨークのこんな片隅のしがない食料品店の中でしぶとく生き続ける生粋のスラヴ語が聞けたという事実に嬉しくなったぼくは、つい好奇心にかられて、「いったい何語をしゃべっているんだい、スラヴ語みたいに聞こえるけど」と男の子のほうに脇から話しかけてしまった。
(「ブライトン・ビーチのロシア語街」より抜粋)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
50
アメリカでロシア文学を学んだりイディッシュ語の講座受けたりポーランド語齧ったり、というちょっとおかしな先輩の留学の話を間近で聞くよう。ニューヨークでロシア系ユダヤ人の多い地区に住み、ワルシャワという町名に惹かれてインディアナ州まで行ってみたりで、アメリカでの人種の”patchwork”が見え始める。彼は土地の人との直接の触れ合いから鋭い言語論文化論を展開する。人間の性格を抉り出すと指摘するイディッシュ語を軸にユダヤ人の歴史を語り、ポーランドやリトアニアの悲哀の話、吹き出してしまうポーリッシュ・ジョークも。2025/08/02
どら猫さとっち
14
スラヴ文学者がロシア文学専攻で留学した場所は、なんとアメリカだった。英語圏内でのスラヴ語の実情…スラヴ語文法に手こずり、そこで知り合ったクロアチア移民と知り合い、言葉や習慣の面白さを見出す。体験談から文法まで、バイリンガルな著者の日々と思考を、余すことなく論じたエッセイ集。今まで知らなかったアメリカの姿が垣間見える。滑稽でありながら、サバイブする著者や周囲の人たちが愛おしい。2025/03/15
greeneggs
4
100分de名著に著者が出演されていたので読んでみた。ロシア文学を学びに行ったアメリカ留学の出来事、スラブ語などマイナーな言語についてなどとてもおもしろかった。ハイネの詩は独語であるからこそ意味をなし、仏、英では別物になる。日本ではバイリンガルは良い意味で用いられるが、海外では貧しい移民の象徴で見下された概念というのも興味深い。2025/04/25
みくに
4
面白かった。ほうぼう旅してる気分。昔、何語の本を読んでいた時か忘れたけど友達に言われた、こういう奴がいつの間にか外国語喋ったりするんだよなというのを思い出していた。事はそう簡単じゃなさそうだけども2025/02/11
はぜ
3
沼野先生のアメリカ留学時代についての本があるのか!と思って手に取ったが、高校生の頃に読んだ屋根の上のバイリンガルの増補版だった。その本を読んだ記憶はあったが中身は全く覚えてなかった。言語学についてのエッセーだったような気がしたのだが、ハーバード時代の話だったんですね。2度目だけど、新鮮に楽しめました。ウクライナが確固とした民族意識を持った人たちであることとか、ヨハネパウロ2世がポーランド出身の初の教皇として就任した話とか、現在のウクライナ戦争や、フランシスコ教皇逝去の話とリンクして不思議な感じがした。2025/04/22
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