内容説明
デカルト,カント,ニーチェ,ロールズらが説く哲学は多彩である.ところが彼らの思想はすべて2つの土台に上に立つ.それはギリシアの思想とヘブライの信仰である.本書は,2つの源泉の本質は何かを,文学や美術,「聖書」から探り,さらに近現代の哲学の深部にどう入りこんでいるかを分析.ヨーロッパ思想がクリアーに見えてくる.
目次
はじめに
第1部 ギリシアの思想
1章 ギリシア人とはなにか
2章 ホメロス
3章 ギリシア悲劇
4章 ソクラテス以前の哲学
5章 ギリシア哲学の成熟
第2部 ヘブライの信仰
A 旧約聖書
1章 イスラエル人の歴史
2章 『創世記』の神話
3章 預言者
B 新約聖書
4章 イエスの生涯
5章 イエスの教え
6章 パウロ
第3部 ヨーロッパ哲学の歩み
1章 中世のキリスト教哲学
2章 理性主義の系譜
3章 経験主義の系譜
4章 社会の哲学
5章 実存の哲学
読書案内
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
78
ヨーロッパ思想の活力の源泉という“ギリシャの思想”と“ヘブライの信仰”を語る第1部、第2部に6割が割かれ、第3部のヨーロッパ哲学は100頁足らず。それでも知識としてアウトラインだけの記述という感じは全くしない。各本質が平易でありながら凝縮して提示され、またそれぞれに応じて文体自体も転調しているかのよう。ギリシャ思想は青天の下の大理石の神殿のようにくっきりと、ヘブライの信仰は痛切な叫びを伴い、“筆者の好みによって選び出された”ヨーロッパ哲学はそのいずれかの変奏のように聞こえてくる。これがジュニア新書って?!2019/06/16
三柴ゆよし
28
「ジュニア」ってなんだっけ?と頭を抱えたくなるほど充実している。僅か240頁の紙幅で、ギリシアの思想とヘブライの信仰を基調として育まれたヨーロッパの思想を概観します、という驚愕本である。近代以降の哲学史についてはたぶんに偏りがみられるものの、「それで、ヨーロッパ哲学の本質は伝わると筆者は確信している」と豪語するだけのことはある。内容は無論のこと、巻末の読書案内に至るまでおそろしく精選、圧縮されており、無駄といえる箇所がほとんど見当たらない。新書のお手本であると同時に新書を超えた書物だと思う。すごい仕事だ。2019/05/02
吉野ヶ里
26
ギリシア思想とヘブライの信仰のところはわかりやすかった。なんとなーくしってたところをもちっと詳しく説明してもらって知った気になれた感じ。入門書として知識のとっかかりに良い本だと思います。最終章のところですが、カントとかハイデガーとかレヴィナスが言ってることがわけわかんないっすね。ちゃんと勉強すればなに言ってるかわかるようになるんだろうか? キリスト教の考え方、最近好きです。「神の国は目に見えるようには来ない。見よ、ここにある、あそこにある、とも言えない。なぜなら、神の国はお前たちの中にあるからだ」2015/08/03
三井剛一
23
初めて読んだときは、本書が絶賛されている理由が、わからなかったが、再読して納得。 ユダヤ・キリスト教、聖書から哲学への繋がりが簡潔にまとめられている。 特にギリシア思想の本質である自由と平等が、ロールズの正義論への影響、ヘブライ信仰の「徹底的な赦し」「一方的な善行」がレヴィナスへ繋がる部分が印象的であった。 まだまだ理解不十分。何度も再読しないと。2024/02/18
白義
23
現在日本語で書かれた最高の西洋思想史入門だということにまず疑いはない名著。ヨーロッパ思想の基調音として理性、自由を探求したギリシア哲学、そして超越的な神という概念、他者への隣人愛という思想を生んだヘブライの信仰。この2つを150ページも割くほど丁寧に説き、それを土台にしたバリエーションとして西洋思想史をロールズやレヴィナスまで一気に駆け抜ける。文の随所に見られる卓見、各思想の最もコアな部分を簡潔かつ豊かに紹介していく無駄の無さ。西洋の理性や叡智が探求してきたものとは何か。その本質が、本書を読めばよく分かる2017/06/18