内容説明
蒲田署刑事課強行犯捜査係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住むコミュニティ“ユートピア”を発見する。容疑者のハナはコミュニティのリーダーであるリョウの妹だった。捜査によって彼らが唯一安心して暮らせる場所を壊してしまうのではないか──里穂子は苦悩しながら調べを進めるうち、かつて日本中を震撼させた未解決の“鳥籠事件”との共通点に気づく。特命捜査対策室で同事件を担当する専従捜査員・羽山圭司とともに執念の捜査の果てに辿りついた衝撃の真実とは。社会問題への真摯なまなざしとミステリの企みが見事に融合した、第24回大藪春彦賞受賞作。/解説=千街晶之
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきら
33
こんな洞察力が欲しい。緊張感のある読書体験が味わえます。物語の組み立て方が素晴らしいと思います。おすすめです。2025/03/03
うわじまお
27
初読みの作家さん。読友さんのコメントに興味を引かれて手に取る。舞台は東京蒲田、無国籍として暮らす人々のお話。一人の無国籍女性が殺人未遂事件の被疑者となり、一人の女性刑事と出会う。ここから始まる物語の中で、日本人なんだけど無国籍となってしまう人の存在、ユートピアという隠れ家での生活、戸籍を復活させる方法などがつまびらかになっていく。多少、啓蒙小説っぽくはあったが、勉強になったし、興味深く読むことができました。2025/07/12
よっち
24
殺人未遂事件の容疑者は無戸籍だった。刑事の里穂子は捜査を進めるうちに、かつて日本中を震撼させた鳥籠事件との共通点に気づくミステリ。殺人未遂事件の捜査中に森垣里穂子が偶然発見する無戸籍者が隠れ住むユートピア。未解決事件として鳥籠事件を追う羽山との共闘、そして家庭を後回しにしてめり込んでゆく捜査がユートピアの崩壊に繋がるのではないかという葛藤。突きつけられた難題は思いもよらない形で意外な繋がりが明らかになっていって、何とかしようと執念で奔走し続けた里穂子の尽力が理解されて、報われる結末には救われる思いでした。2025/02/11
takaC
22
面白かった。夢中で読んだが2日かかった。千街晶之の解説によると本作が辻堂ゆめの現時点での最高傑作とのこと。その言葉を鵜呑みにするといくつもある他の作品はここまで面白くはないということになるので、傑作ハンターとしては残念。2025/06/19
いっちゃん
17
単行本で読んでなかったので、大藪春彦賞受賞作の本作品、楽しみに読みました。様々な事情でいないことにされた、無戸籍の人。たくさんいるんだ、びっくりだよ。新しい知識を得られました。無戸籍の人であっても、住民登録ができることとか。保険証ももらえることも。日本人であることの証明、むずかしいんだな。きびしい環境で生き抜いてきた人だから、証明に必要な小さい頃の写真なんて持ってないの当たり前やろ。2025/08/04