内容説明
蒲田署刑事課強行犯捜査係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住むコミュニティ“ユートピア”を発見する。容疑者のハナはコミュニティのリーダーであるリョウの妹だった。捜査によって彼らが唯一安心して暮らせる場所を壊してしまうのではないか──里穂子は苦悩しながら調べを進めるうち、かつて日本中を震撼させた未解決の“鳥籠事件”との共通点に気づく。特命捜査対策室で同事件を担当する専従捜査員・羽山圭司とともに執念の捜査の果てに辿りついた衝撃の真実とは。社会問題への真摯なまなざしとミステリの企みが見事に融合した、第24回大藪春彦賞受賞作。/解説=千街晶之
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あきら
36
こんな洞察力が欲しい。緊張感のある読書体験が味わえます。物語の組み立て方が素晴らしいと思います。おすすめです。2025/03/03
うわじまお
33
初読みの作家さん。読友さんのコメントに興味を引かれて手に取る。舞台は東京蒲田、無国籍として暮らす人々のお話。一人の無国籍女性が殺人未遂事件の被疑者となり、一人の女性刑事と出会う。ここから始まる物語の中で、日本人なんだけど無国籍となってしまう人の存在、ユートピアという隠れ家での生活、戸籍を復活させる方法などがつまびらかになっていく。多少、啓蒙小説っぽくはあったが、勉強になったし、興味深く読むことができました。2025/07/12
katsukatsu
31
蒲田署の刑事、森垣里穂子が担当した殺人未遂事件の容疑者の若い女性ハナは無国籍者、ハナを追って里穂子が見たユートピアとは……。里穂子はもう一つの事件である鳥籠事件を追う本庁の刑事、羽山圭司とコンビを組んで、捜査にあたります。2つの事件の謎解きにも二転三転があって面白いのですが、このミステリーの魅力は何といっても無国籍者を描いたこと。社会派のミステリーです。里穂子の人間としての魅力があふれていて、容疑者だったハナとの繋がりに胸を打たれます。重いテーマの中にも、しっかりと光を感じる辻堂さんの力作、意欲作でした。2026/05/24
よっち
27
殺人未遂事件の容疑者は無戸籍だった。刑事の里穂子は捜査を進めるうちに、かつて日本中を震撼させた鳥籠事件との共通点に気づくミステリ。殺人未遂事件の捜査中に森垣里穂子が偶然発見する無戸籍者が隠れ住むユートピア。未解決事件として鳥籠事件を追う羽山との共闘、そして家庭を後回しにしてめり込んでゆく捜査がユートピアの崩壊に繋がるのではないかという葛藤。突きつけられた難題は思いもよらない形で意外な繋がりが明らかになっていって、何とかしようと執念で奔走し続けた里穂子の尽力が理解されて、報われる結末には救われる思いでした。2025/02/11
seba
26
かつて世間を震撼させた保護責任者遺棄事件、通称「鳥籠事件」。この被害児童の兄妹を狙った誘拐事件がその一年後に発生し、二十年以上未解決のままという背景がある。一方現在、自身は無戸籍だと主張する、殺人未遂事件の被疑者女性。釈放後に彼女が帰り着いた場所は、無戸籍者の「ユートピア」であった。二つの事件の繋がりとは――。現代社会の仕組みは戸籍などを前提としているが、生まれた瞬間から法律の枠組みから外れてしまった人々もまた確かに存在する。その多くが自分に責のない理由によるもの。救済の手立てがより拡充されることを願う。2026/02/07




