内容説明
第100回(1988年下半期)直木賞受賞作
明治初年の東京を舞台に、「最後の木版浮世絵師」となった
小林清親の半生を描く傑作時代小説。
失われつつある江戸の情景への愛惜、一世を風靡した「光線画」の凋落。
時代の激動に呑み込まれて沈みゆく人々と自身へのやるせなさを噛みしめる清親の、優しさゆえの苦悩と新時代へかける想いが交錯する。
「いかにも好もしい男」――解説・田辺聖子
単行本 1988年11月 新人物往来社刊
文庫版 1991年11月 文春文庫刊
文庫新装版 2025年1月 文春文庫刊
【この電子書籍は文春文庫新装版を底本としています。2022年11月に電子版配信を開始した同タイトル作の表紙を一新したものであり、作品内容に変更はありません。】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
56
「明治初年の東京を舞台に、「最後の木版浮世絵師」となった小林清親の半生を描く」時代小説。明治の小林清親は、大正昭和に活躍した川瀬巴水 (かわせはすい 拙稿「川瀬巴水 旅情詩人と呼ばれた版画絵師 没後50年展」)と共に、明治以降で好きな浮世絵師の一人。ほかに土屋 光逸なども見逃せない(拙稿「古代の東海道沿いに住んでいた」など参照)。2025/06/19
エドワード
28
小林清親は明治に生きた最後の浮世絵師と呼ばれる。幕臣だった彼は、一度駿府へ赴き、剣術興行などを行っていたが、江戸へ戻り、絵の修行を始める。新しい東京の姿を描いた絵は出版されるや光線画と称して評判となる。彼をめぐる人々との愛情あふれる交流がいい。嫂の佐江に抱く思慕、遊女の紅梅との出会いと別れ。画家の月岡芳年、河鍋暁斎との親交も楽しい。しかし彼の家族は落ち着かない。次女の死、妻との離婚。そんな出来事が江戸から東京へと移りゆく明治初年の世相の中に描かれる。お芳と年の市の終幕がいい。田辺聖子さんの解説も秀逸だ。2025/05/29
ふたし
10
幕末から明治にかけ、時代の波に翻弄されながらも己の道を切り開く。新しい日本を作った維新の英雄の話もいいが、こういう人の話もいい。絵師としての成功も興味深かったか、元幕府の下級役人の新政府に対する思いも興味深かった。2025/10/02
たいこ
10
時代小説が沁みる年になったかとしみじみ。光と影の浮世絵をテーマにした展覧会が数年前にあって、結局行けなかったけど気になっていた小林清親。目まぐるしい時代の変化の様子が生き生きとわかりやすく、どんどん読めた。小説は清親の人生の途中で終わるけれど、Wikipediaで調べたら、そのあとがなかなか凄まじくて、そっちも気になってしまった。2025/05/01
スエ
9
第100回直木賞受賞作。明治の浮世絵師であり、「光線画」で名を馳せた小林清親の物語。明治維新後の混沌のなかで、御家人から絵師へと転じ、時代に翻弄されながら作風を変えていく様がつぶさに描かれるのだが…。翻弄されっぷりが見事で、そこにはあまり当人の意志というものが感じられなくて。本当は波瀾万丈な人生のはずなのに、妙にのっぺり感じられたのが残念でした。弟子の井上安治とのエピソードも深掘りしてほしかったですね。清親ファンとしては、ちと物足りない作品でした。2025/10/19




