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内容説明
日本人にも馴染みの深い「四大奇書」の『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』。出版バブルを迎えた明代後期は、人々が規範や常識を超えて、自分らしい人生を求めた、熱狂の時代だった。いかにして話し言葉による「白話小説」は生まれたのか。なぜアウトローが主人公で、反体制的なのか。作品を刊行した真の狙いとは何だったのか。元代から清代まで辿り、政治史・世界史からのアプローチも用いて、中国文学史の謎を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
123
いわゆる中国四大奇書は、明朝期の複雑怪奇な政治の所産だった。洪武帝による士大夫層の大粛清と科挙改革で下層階級にも読書習慣が広まり、読んで面白い本が広く求められた。その後の皇帝も独裁権を確立しても寵臣の専横を招き政争が相次ぎ、政治的敗者が勝者への批判を『三国志演義』や『水滸伝』『金瓶梅』など白話小説として出したのだ。また『西遊記』は仏教宣布の手段であり、明朝の出版統制が緩やかだったこともあって大量に出された本が読まれた。歴史家は「明代は退屈」と呼んだそうだが、文化的には波乱万丈で情熱的な時代といえるだろう。2025/03/01
電羊齋
21
「四大奇書」に代表される白話小説から明代という時代を読み解いた好著。元代の白話文の書記言語への採用と「楽しみのための読書」の発生、雅と俗、文と武の融合とそれによる白話小説の出版と普及、庶民的で激越な明の皇帝と士大夫、「江湖」に染まった武宗、善悪を併せ持つ怪物的人物、「情」を肯定する陽明学。あらゆる人間たちが熱狂的に「情」と「真」を追求した自由で猥雑な時代が読者の前で繰り広げられる。そして明代という時代と思想は清代に入り一旦否定されるが、明代が残した文化は受け継がれやがて近代に開花したとされる。面白かった。2025/02/23
さとうしん
19
白話小説を軸にして見る明代史。モンゴル時代に白話文が書記言語となった経緯から、明代にかけて知識人を中心に人々が「楽しみのための読書」を受容するようになり、知識人を書き手として四大奇書を中心とする白話小説が出版される過程を描く。平民の気質を持った激情的な明朝皇帝、清代以後ネガティブに評価された明代の学問、武官的な資質を備えた明朝の文官と文官的な資質を備えた明朝の武官、目的は手段を正当化すると信じた胡宗憲や張居正ら等々、様々な面で明代史の再評価を行っている。2024/12/30
ピオリーヌ
17
明代の人々の飾り気のない率直な態度、その一方で善とも悪とも定めようのない複雑な性格が面白い。張居正を「悪なる者でなければ善なる目的を達することはできないという冷酷な現実」を浮き彫りにさせる人物と評したのは言い得て妙。またこれが印象的。58頁より。「朱元璋には二十六人もの男子がいたが、後継者たるべき皇太子は父からの強い抑圧ゆえか、早死にしてしまい」2025/03/06
河イルカ
6
文学と政治の話が半々くらいで、それぞれの関係性を読み解くことで、明といういまいち印象薄い時代の世相がよく分かる。 この時代のあるがままをよしとする気風はモンゴルに感化されたに違いない。 そしてそこから生まれた白話小説が、紅楼夢などの私小説から現在までつながっていくのは非常に感慨深い。2025/02/01




