内容説明
洪水などの撹乱を利用して更新してきた「水辺林」は、
河川開発によってその貴重な更新機会の多くを失った。
在来種が少なくなった水辺には外来樹種が侵入し、
その伐採に多くの手間と時間が割かれている。
豊かで健全な水辺環境を未来に残すためには、
まず、水辺に生きる樹木たちがいかにして水辺環境を生き抜き、
子孫を残すのかを知らなければならない。
本書では、100点近いカラー写真とともに、個々の樹種の生態から水辺林保護のポイントまで、
水域と陸域のつながりを取り戻すための理論と実践をやさしく解説します。
目次
はじめに
第1章 失われる水辺林
1 水辺がもたらす恵みと災い
2 減少する水辺環境
3 戦後の水質汚染
4 河川と陸域との分断
第2章 水辺林とは何か?
1 河川流程における位置から定義する
2 地形・生態学的影響・樹木の種類で考える
3 多様な攪乱が発生する水辺域
4 攪乱がつくる多様な土壌・水分・光環境
5 水辺林が育む生き物たち
6 ヒトも恩恵を受けている
第3章 水辺の樹木の多様な生き方
1 樹木の生活史とは?
2 花を咲かせる
3 花粉を運ぶ(風媒・虫媒)
4 種子の生産(豊凶)
5 種子を散布する
6 眠る種子(埋土(まいど)種子)
7 発芽する(発芽場所)
8 実生の成長(光環境)
9 水との格闘(耐水性)
10 樹木の寿命(長寿命と短寿命)
11 萌芽発生
12 栄養繁殖(枝で繁殖)
第4章 代表的な水辺林とそこに生きる樹木
1 渓畔林
シオジ/コラム─シオジとの出合い/サワグルミ/トチノキ/カツラ/
コラム─カツラとの出合い/ケヤマハンノキ/オヒョウ/フサザクラ/
ケヤキ/スギ/コラム─スギとの出合い/ヤクシマサルスベリ
2 山地河畔林
ハルニレ/ケショウヤナギ/ユビソヤナギ/コラム─ユビソヤナギとの出合い
3 河畔林
エノキ・ムクノキ/ヤナギ類
4 湿地林
ハンノキ/ヤチダモ/ヌマスギ/コラム─ヌマスギとの出合い
5 低木
サツキ/コラム─サツキとの出合い
第5章 なぜ樹木は水辺で共存できるのか?
1 光・土壌・水分環境の違い
2 多様な自然遷移
3 マクロからミクロへ
4 時間とともに入れ替わる個体・樹種
第6章 大規模攪乱後の水辺林の更新状況を調べてみたら
1 大規模土石流
2 洪水
3 ハリケーン
第7章 水辺林への侵入者ハリエンジュ
1 ハリエンジュとは
2 世界的には有益な樹木でもある
3 問題化するハリエンジュ─景観・生物多様性・河川管理
4 ハリエンジュの驚くべき生活史
種子発芽/種子散布/実生の成長/栄養繁殖/
コラム─ハリエンジュ(ニセアカシア)との出合い
5 分布を拡大させた日本の河川管理
6 ハリエンジュとの攻防戦
上流域での樹種転換/巻枯らしによるハリエンジュの除去/
刈り取りによるハリエンジュの除去
第8章 どのように水辺林を再生し復元するか
1 「原生流域」をモデルにする
2 水辺林が二次林の場合
3 水辺域まで人工林が造成されている場合
4 水辺域が無立木地の場合
5 学術研究・文献を参照する
6 二次林の高樹齢化を見守る
7 適切な樹種を植栽する
8 植栽のポイント
9 再生を促す間伐のコツ
10 再生修復後のモニタリングは欠かせない
11 水辺林の自律性を取り戻すには
流域全体をつなげる/陸域と水域を連続させる/河川の自然攪乱を回復する
第9章 水辺林をまもる
1 水辺林の重要性
生態学的機能/生物多様性/生態的回廊
2 水辺林の危機
水辺林の破壊/外来樹種の侵入/ニホンジカによる植生破壊
3 水辺林保護の取り組み
渓畔林保護の取り組み/山地河畔林保護の取り組み/森里海の接続/水辺の環境教育
4 水辺林はなぜ必要か
水辺林をまもる理由/水辺林と防災/行政に期待すること
おわりに
参考図書
植物名索引
事項索引
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aki
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