内容説明
帝国の首都として繁栄を極めたローマ。世界に類を見ない壮麗な都市と建造物は皇帝たちの熾烈な権力闘争の場であり、その政治的意図を示す舞台でもあった。本書ではカエサル登場以前の紀元前2世紀から、コンスタンティノープル遷都にいたる330年まで約500年のローマの都市計画と建造物を一望し、そこに刻まれた各皇帝の政策や思想、歴史を読み解く。凱旋門、神殿、コロッセウム、浴場、広場や水路などを備えた都市はやがて変革期を迎え、皮肉にも都市に蓄積された歴史の重みによって終止符を打たれることになる。帝国の興亡を浮かび上がらせるスリリングなローマ都市史。
目次
第一章 壮麗な都へ──カエサルの野望/1 危機に立つローマ/軍の弱体化/グラックス兄弟の失敗/マリウスの軍制改革/2 紀元前二世紀までのローマ/権力闘争と建築競争/商業施設の再開発/ヘレニズム文化摂取という「近代化」/公共基盤の整備/3 スラの時代/共和政の実質的崩壊/コミティウムの改造/ローマ独自の建築/4 ポンペイウスの時代/スラの炯眼/新市街地の開発/劇場の建設/5 カエサルの野心/ローマ宗教界の頂点へ/キケロの悲劇/カエサルの危機/カエサル、ルビコン川を渡る/クレオパトラとの同盟/首都整備計画/数々の大造営事業第二章 秩序ある都──アウグストゥスの政治/1 カエサル亡きあと/ブルトゥスの決定的失敗/アントニウスの追悼演説/三頭政治/オクタウィアヌスの台頭/アクティウム沖の海戦2 アウグストゥスの帰還/軍の全権掌握/マルケルス劇場とアポロ・ソシアヌス神殿/3 高揚する帝政ローマ/鷹揚さと質実/アウグストゥス広場/平和の祭壇4 フォルム・ロマヌムの再建/元老院議事堂の完成/三基の凱旋門/ユリウス・クラウディウス朝継承のための造営/5 壮麗な都市の完成/アグリッパの公共施設建設/カンプス・マルティウスの発展/穀物倉庫の建設/都市行政制度の整備/6 七五年の生涯/パンテオンの位置/パンテオンの建立目的/第三章 新都市整備計画──ネロの光と影/1 ティベリウスの政治/アウグストゥスの遺書/食糧・財政問題/数少ない建築事業/セヤヌスの奸策/経済混乱と貧富の格差拡大/2 カリグラの変転/ゲルマニクスの死/アントニアのもとでの二年間/倒錯の目覚め/六カ月の善政/狂気と暗殺/3 歴史家皇帝クラウディウス/食糧の逼迫/解放奴隷の活躍/常識人としての施政/妻たちの奸計/4 ネロ、五年間の理想政治/セネカとブルスの後見/公共事業と娯楽の提供/5 ローマの大火と新しい都/ローマ炎上/「新都市」計画/黄金宮殿/第四章 横溢の都──フラウィウス朝の時代/1 ウェスパシアヌスとティトゥス/六〇歳の皇帝/手本はアウグストゥス政治/「パンとサーカス」の提供/教育制度の整備/ティトゥスの二年間/2 ドミティアヌスの権力政治/フラウィウス家顕彰のための建築/斬新な都市計画/第五章 都市機能の充実──五賢帝の時代/1 老皇帝ネルウァ/2 軍人皇帝トラヤヌス/ネルウァの指名した後継者/公僕フロンティヌス/トラヤヌス広場の建設/港の建設/アリメンタ制/3 巨人皇帝ハドリアヌス/ギリシア文化愛好者/平和的手段による国家経営/政治表明の場としてのパンテオン/社会の変質と新しい美意識/一二年間にわたる属州旅行/建築家ハドリアヌス/複雑巨大な人格/4 篤実な皇帝アントニヌス・ピウス/歴史のない時代/維持保全のための工事/5 哲人皇帝マルクス・アウレリウス/二人の皇帝/戦争と疫病/防御のための拡張/後継者の愚行/失われた信頼/第六章 王朝都市──セウェルス朝の目論見/1 競り落とされる帝位/親衛隊の実質支配/内乱の広まり/2 北アフリカ出身の皇帝セプティミウス・セウェルス/「神の家」としての家族/建造物と碑文/権威の告知板としての建設/官僚化と軍団重視/3 カラカラと皇母の分担統治/弟殺し/ポメリウムの撤廃/娯楽施設としての建設/4 国家理念の喪失/地方神官から皇帝へ/元老院による貴族政治/都ローマの地位低下/第七章 永遠の都──都市に刻印される歴史/1 皇帝・元老院・キリスト教徒の確執/権力と合法性のせめぎあい/アラブ人皇帝の登場/宗教イデオロギー強化策/キリスト教徒との融和/2 アウレリアヌスの防衛対策/都をとり囲む城壁/切り捨てられた未来/3 ディオクレティアヌスの伝統復帰策/四分割統治/秩序回復の試み/4 コンスタンティヌスの遷都/伝統宗教との妥協/キリスト教の都への改造/歴史の重み/文庫版あとがき/解説 都市ローマでの古代との対話(陣内秀信)/挿図出典/参考文献
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MUNEKAZ
我門隆星