内容説明
ヒット作『妻の終活』の著者が贈る最新の人情ドラマは「親の終活」
父が脳出血で倒れた。
折り合いの悪い父・時次郎と、この10年連絡すら取り合っていなかった42歳の篠崎明日美。実家からは勘当されとっくの昔に母に逃げられている時次郎にとって、一人娘である明日美は唯一の身内である。変わり者の父は16年前から「まねき猫」という立ち飲み屋を営んでいるが、医師には「回復後も麻痺が残る」と言われ、店に立ち続けるのは難しそうだ。「まねき猫」を閉めるしかないと考えていた明日美だったが、時次郎の友人で店の回転資金として300万円貸しているという「宮さん」によると、返済に関しては「『まねき猫』が続くかぎり無期限」ということらしく、簡単に閉店するわけにはいかず……。
果たして、明日美の選択は――。
※「せんべろ」とは:1000円でべろべろに酔える酒場などの俗称。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
194
最近、赤羽でも仕事をしており、タイトルと表紙イラストに魅かれて読みました。坂井 希久子、2作目です。もっと赤羽色が強いかと思いきや、割と普通の人情噺、家族小説でした。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/10/005844.html2024/11/22
いつでも母さん
142
あぁ、良い読後感に浸っている。私には私の事情があり「他人のあなたに何が分かるの」と喉まででかかる。同じことを言われてもいるのにね。 本作は10年間没交渉だった父·時次郎と娘·明日美の話なのだ。何度も「言葉が足りない!」と感情の縺れに私の気持ちも乱高下する。父の店「まねき猫」を舞台にそこに集う人の情が鬱陶しくも暖かい。いつしか明日美自身の辛い過去をも引っくるめて再生していく過程がなんとも胸を熱くする。いつか続きも読みたくなるのは私だけじゃないと思う。2024/11/04
モルク
120
疎遠だった父が倒れ父が営む赤羽の居酒屋「まねき猫」を訪れた娘明日美。店を片づけやめるつもりだったが成り行き上手伝うことに。まわりの人と関わるうちに父が子供たちに食事をさせていたことを知る。子供食堂もあるが毎日やっているわけではないからという父の新たな面を知る。放蕩親父で飲んだくれ呆れて育ての母も出ていき小さい頃から寂しい思いをして来た明日美、そんな親でも退院後は…自宅介護?絶対無理、じゃあどんな施設?読みやすくさっと読んでしまったが一人親の貧困、介護等ヘビーな問題にも触れておりいろいろ考えさせられた。2024/12/18
おしゃべりメガネ
114
タイトルどおり、'せんべろ'の立ち飲み屋が舞台の人情物語です。10年もの間、没交渉だった父が突如脳出血で倒れ、残念ながら麻痺が残ると知らされた「明日美」。42歳でコールセンターで勤務している彼女には過去にちょっとした事情があり、今は一人で暮らしています。いきなりの出来事で店の今後や父の介護など悩みはつきませんが、幸いにせんべろ飲み屋『まねき猫』のスタッフや常連客が何かとヘルプしてくれます。全体的には人情優先のお話ですが、なかなかシリアスな話もあり、坂井さんならではな構成かなと。人の繋がりって大切ですよね。2024/11/27
fwhd8325
110
赤羽という町はよく通った時期があるだけに、とても興味をそそられるタイトルです。タイトルからライト系かなと想像していましたが、坂井さんだからそんな単純ではないだろうなとも思っていました。社会情勢を織り交ぜながら、なかなかシリアスな物語でした。2025/02/24