内容説明
吉田恵里香氏推薦!豪州発あの傑作の姉妹篇。
「社会や環境、時に家族や出生時の性別が、ペギーの壁となり牙をむく。
弱き者にこそ味方となるべきものが敵となる社会で、どうしようもなく知識や学問に惹かれてしまうのは、これらが決して自分を裏切らないから。
それが、この物語が今の時代に必要である理由だと思う。」
ーー脚本家・吉田恵里香氏(連続テレビ小説『虎に翼』、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』)
第一次世界大戦下の英国。オックスフォード大学出版局製本所で双子の妹とともに働く女工ペギーは、夜になると工場から密かに持ち帰った不良(ヤレ)本をむさぼるように読み、大学で学ぶことを夢見ていた。だが、労働階級の彼女にとって学問は決して手の届かない高嶺の花だ。
戦争は日に日に激化し、街にベルギー難民が押し寄せ、疫病が流行し、社会は変わっていく。ペギーは、障害のある妹への責任やベルギー負傷兵との恋に悩みながら、大学を目指す――。
世界が恋した豪州発の傑作歴史小説『小さなことばたちの辞書』の姉妹篇が登場。前作同様オックスフォード大学出版局を舞台に、若く貧しい女工の挑戦、戦争と銃後のリアル、そして当時の製本工場を活写した紙の本への愛あふれる珠玉の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
102
第一次世界大戦下のオックスフォードで製本職人bookbinderとして働いていた女工ペギーの物語。1914年8月から1920年のイギリスはドイツに宣戦布告し、ベルギーから多くの難民を受け入れた。アメリカの参戦で勝利を勝ち取ったが、多くの戦死者とスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザで社会は大きく変わった。ペギーは女工からサマーヴィルカレッジの学生となり戦後女性参政権が得られる様になった。女性の目線での歴史を、フィクションであるが当時の資料から想像して出来るだけ史実に沿って描いた物語で、読み応えがありました。2025/01/08
キムチ
57
読み始めたものの、ボタン掛け違えか‥頭にちっとも入ってこない。珍しく、「再度仕切り直し」で読了。ウィリアムズ1作目は言葉を紡ぐことへ情熱を捧げるエズメが登場∼彼女は中産階級、或る程度の知識教養があった。スピンオフではなくサイドストーリー的当作品のヒロインはペグ。幼い頃に母は夭折、運河に浮かぶ船が住居、無論 学ぶ機会すらない。だが船の中は母親の文学好きもあって「紙屑」的表装無し、綴じ無し等が山と愛蔵。第一次大戦下のオクスフォード大学製本部で仕事に就く彼女を巡る群像の層が厚い・・やがて登場するベルギー人2025/04/23
NAO
57
第一次世界大戦中のオックスフォード大学の出版局があるジェリコが舞台。出版局には製本に関わる職人や女工たちが多数働いている。知的好奇心旺盛な主人公が戦時中の慈善活動の際上流階級の女性と知り合うことで、新たな道を切り開いていく。5つの章は、当時オックスフォード出版局が出版した本(冊子)からなり、時期も合わせてあるという。戦争の悲惨さ、階級差別、女性の地位向上、そのどれもが、あまりにも重くて、何度もうっと胸を詰まらせながら、それでも読む手が止まらなくなっていた。2025/04/16
星落秋風五丈原
40
ノルウェーから逃れてきた人たちとの友情、ペギーの向学心と恋愛、勉学に励むうちに知っていく母の過去等、芯となるテーマが沢山ありすぎるように感じた。例えば、サフラジェットについては、あれほど投獄されて敵視されていたサフラジェットが、戦争協力に焦点を移したため、世論は1918年の部分的な女性参政権導入になった。つまり参政権獲得は、戦争賛成と引き換えであったわけだ。その辺りに割り切れないものを感じていたサフラジェットはいなかったのか。そのあたりの葛藤は描かれていなかった。ペギー中心にもっと絞っても良かったのでは。2025/03/14
愛玉子
38
「どの一冊もひとたび読まれれば、ほんの少しだけ違う物語を語ることになるのだ」製本所で働くペグの密かな楽しみは、ミスにより紙屑になるはずの頁をこっそり持ち帰って読み耽ること。第一次世界大戦中のオックスフォードを舞台に、貧困、階級、性別、様々な困難を乗り越えて、ペグは学ぶ自由を手に入れようとする。続編ではないけれど『小さなことばたちの辞書』と重なる世界なので、なじみの名前が出てくるのが嬉しい。学びたいという情熱を胸にささやかな一歩を積み重ね、壁を越え、道を切り拓いていった名もなき女性たちの人生に想いを馳せる。2025/07/29