調査する人生

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調査する人生

  • 著者名:岸政彦【著】
  • 価格 ¥2,530(本体¥2,300)
  • 岩波書店(2024/11発売)
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  • ISBN:9784000616720

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内容説明

長い年月をかけて対象となる社会に深く入り込み,そこで暮らす人びとの人生や生活を描くフィールドワーカーたちは,自分たちの人生もまた調査に費やしている.生活史調査で知られる著者が,打越正行,齋藤直子,丸山里美,石岡丈昇,上間陽子,朴沙羅の卓越した6人のフィールドワーカーたちと「調査する人生」を語り合う.

目次


第1回 打越正行×岸政彦 相手の一〇年を聞くために、自分の一〇年を投じる
 暴走族の中でパシリをはじめる
 「大学生のくせによく頑張ってるじゃないか」
 「地元」はどうやら優しい共同体ではない
 ネットワーク全体の中に埋め込まれて関係性や作業が進んでいく
 地元の実践感覚を数年かけて身に付けていく
 パシリを引き継ぐ後輩が入ってこない
 製造業は「書かれた言語」、建設業は「話し言葉」のコミュニケーションが中心
 リスクを最小限にしてうまく生き残り続ける能力
 暴走族が一〇年間で激減
 ストレートな地元愛を聞くことはほとんどない
 敬意を持つ相手は、妻や彼女を殴る男でもある
 調査の初日にパクられる
 いつまでたっても自分はよそもの
 関わり続けたら完全に中立的ではいられない
 本は燃えてもフィールドノートは燃えなかった
 沈黙に耐えきれずカラオケで曲を入れてしまう
 「別世界のビックリ話」で終わらせないためにどう書くか
 暴力の問題を自分の問題として書く
 調査対象でもフィールドワークでもなく、人生である
第2回 齋藤直子×岸政彦 生活そのものを聞き取り続けて見えてくること
 社会学との出会い
 複数の「しんどさ」がつながったとき
 生活史の第一人者たちから学ぶ
 部落問題の調査でなにを聞くのか
 生い立ちを肯定するための「自分史」運動
 テーマだけを聞くのはもったいない
 「何をされたか?」ではなく「どう思ったか?」からの広がり
 質的調査も量が大事
 詳しくなるのはストーリーやインタビューの技術ではない
 当事者と当事者でないところの接点
 「社会問題が実在する」とは
 差別する側のパターン化
 部落問題と結婚・家制度
 「結婚には反対だが差別ではない」の疑わしさ
 差別する側の非合理的で過剰な拒否感
 やればやるほど離れられなくなる
第3回 丸山里美×岸政彦 簡単に理解できない、矛盾した語りを掘り下げたい
 ホームレス研究から排除された女性
 調査をお願いする勇気
 畳の上で寝ることよりも大事なこと
 「改善」より先に「理解」したい
 人は矛盾を抱えて生きている
 これまでの研究は「男性ホームレス研究」だった
 問いの前の問い
 社会学者が「責任解除」をすること
 語りを理由に還元しない
 語りの矛盾や飛躍こそもう一度聞く
 理論がないと何十人聞いてもわからない
 一つの行為に一つの理由、ではない
第4回 石岡丈昇×岸政彦 生きていくことを正面に据えると、なかなか威勢よく言えない
 「咬ませ犬」ボクサーに話を聞く
 フィリピン、マニラのボクシングジムへ
 なぜボクサーになるのか?
 泣き真似、豪雨、ヘビ
 立ち退きは「宿命」か
 威勢よく言えることを可能にする条件
 まだまだわかる部分があるはず
第5回 上間陽子×岸政彦 調査する人生と支援する人生
 沖縄の女性たちの調査をはじめる
 インタビューって面白いな、と思った
 「沖縄は絶対にやらない」と決心した院生時代
 「強いコギャル」の話を書きたかったはずなのに
 「話がまとまるまでいなきゃ」って思う
 支援に振り切りシェルター開設
 私がやっているのは、それぞれを特別扱いすること
 加害者の語りをどう書けるのか
 調査相手との距離・関わり方
 しつこさが大事
第6回 朴沙羅×岸政彦 人生を書くことはできるのか
 親族の生活史を聞く
 テーマや問いを設定して……あれ、設定できなくない?
 インタビューはコントロールできない
 その場で言語化された言葉の解釈
 一時間、二時間の人生、九〇年の人生
 「酒がうまい」論文
 「わかる」ことと「共感する」こと
 「中の人」の体験の面白さ
 歴史的事実と個人の語り
 「歴史的な出来事」の拡張
 ジャーナリズム、カウンセリング、社会学
 相手が泣いてしまう経験
著者紹介

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

83
社会学者の岸政彦が同じ研究者仲間のフィールドワーカー6人との対話。調べれば調べるほど、研究することに取りつかれていく研究者の業が見えてくる「調査する人生」。研究者自身が当事者になったり、支援者になったりしながら参与観察する。まさにフィールドワークの場こそ、研究者の生きる場所だ。沖縄の暴走族の仲間になってのパシリとなって受け入れてもらった打越正行(2024年末没)にはじまり、沖縄の夜の街を生きる少女たちを調査する上間陽子、マニラのボクシングジムに住み込んだ石岡丈昇など。→2025/07/10

ネギっ子gen

64
【社会を質的に調査する、ということはどういうことか】フィールドワーカーたちとの対話の記録。相手は、打越正行、齋藤直子、丸山里美、石岡丈昇、上間陽子、朴沙羅という、著者自身もっとも尊敬する「質的調査屋」の6名。それぞれのテーマと対象は、沖縄のヤンキー、部落の結婚差別、女性ホームレス、フィリピンのスクオッター、沖縄の女性の貧困、在日コリアンの移動の歴史。<私たちは体を張って現場で集めてきた人々の行為や会話の記録、あるいはさまざまな場所で語れる生活史の語りに対して、理論の力を借りながら、「解釈」を加える>と。⇒2025/08/04

ケイティ

32
岸さんと6名の「質的調査屋」であるフィールドワーカーとの対話集。とても良かった。皆さんとても興味深くて、付箋だらけになりました。他者の行為や選択は、意志だけでなく偶発的なもので、そこに至る大きな歴史や社会構造が入り込んでいて、その文脈の上で「そこに自分が存在したら」という想像力とともに考えなくてはいけないと思った。また、誰もが自分なりの合理性を持っており、「他者の合理性」を意識することで、共感はできなくても、他者がどういう理由で行動や選択しているかを考えたり、聞き取ることで理解に繋がるのではと感じられた。2025/02/15

タカナとダイアローグ

18
生活史を扱う研究者と岸先生の対談集。沖縄のヤンキー、ホームレスの女性、被差別部落の結婚など、抑圧された声にならない声を拾い上げ、個人的なことは社会的なことだなと思わせてくれる。岸先生の、他者の合理性は最重要な概念だと思う。全員が自明だと思っていることなどなく、それぞれ固有の歴史を持ち、固有の「合理」がある。統計では掬い上げることができない個別性をとりあげる質的研究。おもしろいと思うのは、ここの人生がひとつもありきたりではなくオリジナル。それでいて理論が生まれる。面白いで留まらず、エンパシーを拡げる必要性。2025/01/27

かんがく

12
著者の本は5冊目。全部で6つの対談から構成され、それぞれの対談相手の調査対象は沖縄の暴走族、部落差別、女性ホームレス、フィリピンのボクサー、沖縄の少女、在日朝鮮人など多様であるが、全員が調査を行うにあたってとても繊細な配慮と学問的な苦悩をしていることがわかる。その調査が暴力、エモ消費、支援や介入になってしまわないかという配慮であり、個人の人生を描くことが学問として成立するのかという苦悩である。岸さんの「質的調査って「一概に言えなくしていく」作業だと思うんです」という言葉がとても印象的。2024/12/06

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