姉と弟 捏造の闇「袴田事件」の58年

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姉と弟 捏造の闇「袴田事件」の58年

  • 著者名:藤原聡【著】
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 岩波書店(2024/11発売)
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  • ISBN:9784000616683

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内容説明

「死刑囚」のくびきを外し,袴田巖が真の自由の身になる時がきた.「捏造」が疑われる警察の動き,死刑判決を下し,支持した歴代裁判所の判断,弁護活動の瑕疵…….寡黙な元ボクサーを精神の破綻に追い込んだ責任はどこにあるのか.献身的に支え続けた姉ひで子と弟の人生を重ね合わせながら,世紀の冤罪事件の全貌に迫る.

目次

はじめに
第一章 事 件
「凶器は売っていない」
浜名湖畔での日々
プロボクサーを故障で引退
一家四人殺害の現場
事件の渦中へ
第二章 拷 問
「袴田しかない」
過熱する報道
理不尽な逮捕
奇妙な遺失物
過酷な取り調べ,手薄な弁護
意識もうろうで「自白」
不審な郵便物に焼けた紙幣
「拷問王」と四件の冤罪事件
第三章 捏 造
みそタンクから「五点の衣類」
主張を変更する検察
緑のブリーフは兄のもとに
元巡査I氏の証言
第四章 死 刑
「無罪の心証」で極刑に
二対一で死刑,三九年後に明かされた合議内容
母親の死と姉の覚悟
控訴趣意書で捏造指摘
東京高裁,はけないズボンで死刑支持
最後の望みを託す
上席調査官の予断と偏見
第五章 喪 心
独居房の弟思い,酒浸りに
引き離された幼い息子
裏木戸からの脱出は不可能
むしばまれる心
第一次再審請求の終結までに二七年
森山法相「常軌逸し始めた」
第六章 釈 放
ボクシング界が支援活動
熊本元裁判官の告白と苦悩
みそ漬け実験結果を新証拠に
取り調べ録音テープを開示
元同僚「一緒に消火活動していた」
死刑停止,四八年ぶりの釈放
戻った自由な時間,検察は抗告
第七章 帰 郷
名誉チャンピオンベルトを手に
六〇歳からマンション一棟建設
五点の衣類のネガ「発見」
散歩に付き添う「見守り隊」
強引に開始決定を取り消した東京高裁
熊本元裁判官との対面
血痕の色めぐり激しい応酬
再審開始決定に喜びの声
第八章 無 罪
検察,特別抗告を断念
釈放を決めた村山元裁判長と対面
再審初公判,「裁かれるべきは司法制度だ」
弁護団長の西嶋勝彦さん死去
袴田さん八八歳,ひで子さん九一歳
再審法改正を求める超党派議連設立
検察側証人も「血痕に赤み残らない」
「弟を人間らしく過ごさせて」
本人不在の法廷で無罪判決
おわりに
関連年表
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たまきら

47
新刊コーナーより。あまりにも長い時間を、尊厳を、そして心身の健康をうばわれてきた袴田さん。彼について何冊か読んだこともあったけれど、58年経ち無罪を獲得した後の、ご姉弟エピソードまで描かれているのはこの本が初めてではないでしょうか。お二人を現在幸せにしているものが、二匹の猫だと知って思わず泣き笑いしてしまいました。ささやかな幸せを奪った捏造への怒りも強いですが、同時にこの事件が長引いたせいで真相にたどり着けないご遺族の方たちのお気持ちもいかばかりか…。2024/12/15

kawa

30
司法当局による証拠物件の捏造を再審裁判で認定。ショッキングな袴田事件の全貌を、袴田巌氏と氏を支え続けてきたお姉さんのひで子さん、支援組織の動きなどを通じてリポート。実に48年獄につながれ、さらに無罪確定まで10年。長い年月の苦しみが氏の精神状態にも問題を生じさせている。過ちを正すのに何故かくも時間がかかるのか。一度掛け違えたボタンを戻すのは、メンツや自己保身が影響して容易なことでないのか。本書から日本の司法制度の暗い闇が垣間見える。2025/02/25

あじ

24
袴田事件についての書籍はこれまでに数冊読んできており、概要は知っていたつもりだが“バスの中の落とし物”については記憶になかった。そして容疑者…。無罪確定前後の新刊は本書の他にもあるので、機会をみて読み進めていきたい。私が知りたかったのは、釈放後の巖さんと姉のひで子さんの様子だった。支援者に支えられ、お二人は水入らずの家族生活を続けてこられたようだ。そして今年、我が家と同じく新たな家族を迎えていらっしゃった。微笑ましいエピソードに目頭が熱くなったのはいうまでもない。ごく一般的な日常を末永く過ごして欲しい。2024/12/23

14
ひで子さんが姉でなかったら、袴田さんは冤罪を覆すことはできなかったのだろうなと。マンションを一棟建て、借金を背負うことで自らに枷をかけて弟の帰りを待っていたひで子さん。死刑判決を下した熊本裁判官が死の床についている福岡まで「今日はローマ教皇に会いに行くことになっている」とのたまった袴田さんを即断即決新幹線で連れて行き、最期に会わせたひで子さん。ホントすごいや…。ひで子さんと巌さんに穏やかな日々が一日も長く続きますように。2025/06/07

koji

14
2つ書きます。①袴田さんの58年に及ぶ闘いを無に帰さないためにも、再審法改正、中でも3つの論点(証拠開示の明文化、検察官による不服申し立ての禁止、再審手続きの整備)の早期決着を求めます。②僭越ですが、袴田巌さんに一編の詩を作りました。恥ずかしながら披露します。「袴田さんの精神は深い闇の中にある。まんまと逃げおおせた犯人にも、捏造の構図を造り袴田さんの尊厳をずたずたにした検察・警察の権力機構にも、怒りを表せない。しかし、”生きている”という存在それだけで、正義を体現し続けている希有の人だ。生き続けて下さい」2025/03/23

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