内容説明
他者に依存するニーズを必ず持つ個人をリベラリズムは捉えられるのか? ケア論を中心に批判が高まっている。本書は、言語化されないままに近代法体系に組み込まれてきた〈向き合ってしまった者〉との関係と、そのなかにある個人を、法の周縁から救い出す。個人を尊重する「自由な社会」の可能性を考える、旧くて新しい構想。
目次
はしがき
序 章 関係性の権利を考えるために――「関係性」と「権利」の関係
一 関係性という言葉
二 「関係性の権利」分析
三 関係性のなかの権利――片務的権利義務関係
四 批判と応答
五 規範的関係論を構想するにあたって――本書の構成
第一章 〈個人の尊重〉と〈他者の承認〉――出生前検査から考える
一 生のはじまりを基点とする
二 非侵襲型遺伝学的出生前検査の導入
三 法の主体
四 〈個人の尊重〉の意義
五 NIPTによって問われる問い――他者の承認
六 生のはじまりと法
第二章 ケアの倫理と関係性――ケア関係を構築するもの
一 ケアの倫理に対峙する
二 〈依存〉をめぐる問題領域
三 ケアの倫理と正義の倫理の関係
四 ケア関係の意味するところ
五 ケア関係のものさし
六 ケア関係と個人――他の何者でもない私
第三章 法的主体と関係性――ケアの倫理とリベラリズムの論理
一 リベラリズムにおける主体
二 主体の位置づけ
三 〈個人の尊重〉の理由と意味
四 〈関係性〉の観念
五 主体と関係性
第四章 関係性の権利――〈差異〉を/から考える
一 差異・平等・関係性
二 「差異のジレンマ」と「暗黙の五つの想定」
三 関係性のアプローチ
第五章 特別な関係下における責任――片務的負担という特性
一 積極的責任(affirmative obligation)の議論
二 リベラルな伝統と積極義務(positive duty)
三 リベラリズムが抱える四つの課題
四 一般的積極義務と特別積極義務
五 協同的個人主義とメンバーシップ
終 章 〈つながり〉のなかで――規範的関係の理論構想
一 社会の自由を考える
二 方法論的個人主義・批判
三 自由意思に還元されない関係性のなかにいる個人
四 規範的関係論――向き合ってしまった者との関係
五 むすびにかえて――自由な社会を構想する規範的関係論
補 論 ケアの倫理とリベラリズム――リプロダクション(生殖)をめぐる視角から
一 問題の所在――個人の尊重と〈わたしの問題〉〈わたしたちの問題〉
二 人口をめぐる状況
三 生殖をめぐる今
四 人口論という観点
五 生殖補助技術の進展と公的助成制度
六 リベラリズムと生殖政策
七 リベラリズム・再考――承継(entailment)の観念
八 個を尊重するということ
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