- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
処刑から80周年――機密解除資料が明かす「史上最高のスパイ」の闇
戦前の東京で暗躍した旧ソ連の大物スパイ、リヒャルト・ゾルゲ(1895~1944)の処刑から2024年11月で80年となる。近年、ロシアではゾルゲの再評価が進み、未公開資料も続々と表に出てきている。
本書は近代ロシア研究の第一人者である名越健郎氏がそうした機密解除資料をもとに、ゾルゲのスパイとしての活躍を臨場感たっぷりに描き出した作品である。
オートバイを駆って上海や東京の街を疾走し、夜の社交界で巧みな話術で権力者たちに食い込み、ドイツ大使夫人、シーメンス社支店長夫人、ルフトハンザ航空幹部の夫人、VIPの女性秘書、アグネス・スメドレーほか手当たり次第に女性と不倫関係になり(なおかつ女性たちを情報源とし)、本国で進むスターリン粛清に脅える――そうしたゾルゲの日常が生々しく甦り、まるでスパイ映画のようである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
76
ゾルゲの活動を時代を追ってかなり詳細にたどっている。協力者の獲得方法や評価など、モスクワに送った電報などの史料を丹念に紐解いていて臨場感があった。特に日本での末期、協力者の通信員が体調悪化とスパイの重圧、ゾルゲへのある種の反感から、打電を依頼された原稿をサボって端折って打電していたのには驚いた。あとは日本が情報戦において高官の脇が極めて甘いことが指摘される。著者はプーチンについての書もあり、KGB上がりのプーチンがゾルゲを高評価し、愛国心高揚に利用しているそうだ。表に出たら終わりのスパイの厳しさを感じた。2025/01/15
Tomoichi
25
ゾルゲに対してどう云う感情もない。敢えて云うならこう云う優秀なスパイを持ったソ連は流石である。諜報国家ロシアの面目躍如である。さて本書について、もうちょっと何が通説で既説で新発見かを明確にしてもらいたかったかな。あと本当の悪魔的スパイの尾崎秀実についてもう少し迫って欲しかった。尾崎あってのゾルゲであり、この国家も国民も裏切った朝日新聞社員を理解できなければこの事件は理解できないと思う。現代の左翼も同様だが、自分の信じる理想がありそれを他人に押し付け、その理想のためなら国家も国民も裏切る。2025/01/12
せつお
13
劇団民藝の芝居「オットーと呼ばれる日本人」(木下順二作)を昨年観た後に購入 ゾルゲは、ソ連(コミンテルン)のスパイとして上海で活動。その過程で尾﨑秀実と出会い、日本の対ソ戦略を聞き出し、それがソ連対ナチスに役だったことは間違いない。 尾﨑もゾルゲも治安維持法違反で逮捕され、処刑されるわけだが、ソ連に帰国していたとしてもスターリンの名のもとに処刑されていたかと。 ヒトラーが独ソ戦に踏み切らなければ、ソ連と日独伊は上手くやっていけたんではなかろうか。2025/02/17
あきこ
4
ゾルゲ事件は気になる。関連本もよく読んでしまう。本書は新しい情報というより詳しい情報が満載だった。しかし歴史的事実は大事だが、ゾルゲ事件の魅力は、ゾルゲがハンサムであること、優秀なスパイであったこと、ソ連の妻の悲劇などの物語性にある。(私の場合)また尾崎の「愛情はふる星~」にある家族への愛情だったりする。じゃあ映画を見ればいいか、というとそうではない。やはり事実に近づきたいとも思うのだ。本書の細かな内容、ソ連とゾルゲのやり取りなど、やはりゾルゲ事件は面白い。2025/06/01
お昼の書棚
3
「事件を振り返る」 戦前に起こったスパイのゾルゲ事件について、新しい資料の視点から解説されている。従来から語られてきた事実に対して、もう少し鮮明に新規性を切り込んでいくと、より魅力的な内容になるかもしれない。事件を振り返る良い機会になる書籍であった。2025/07/25