内容説明
すべて「じぶんごと」として考えることを迫られる時代に「ひとごと」そのものを思考する倫理を立ち上げる。気鋭の思想家がデビュー以来綴ってきた批評=エッセイが哲学へと結実する実践の書。
◎伊藤亜紗氏推薦!
何かに魅入られる。その魔法の時間を引き伸ばすことが批評であったような時代に、本書は終わりを告げる。いったん魅入られたならば、魔法が去ったあとの醒めた体が何事かを語り出す。本書はそのことを証明する。
◎内容
何かを発言することが通販サイトの商品ページに足跡を残すことと大差なくなってしまったこの時代に、〈書く〉ことの意味はいかにして立ち上げなおされるのか――『非美学』の若き哲学者による渾身の批評=エッセイ集。書き下ろし序文と巻末の著者解題も必読!
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道徳も真理も腐りきっているとしたら、いったいひとは何を拠り所にして生きていけばよいのか。そんなものはない。しかしそれはたんに人生の厳しさであるだけでなく、楽しさや喜び、あるいは優しさの条件であるだろう。雑多な文章が収められたこの本に通底するのは、「ひとごと」との距離のうちにある、そのようなポジティブな条件の探究である。――本文より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
池波
1
出来事が出来事のまま漂うことを許さないような〈密〉から距離を取ること。その距離の取り方は、「いてもいなくてもよくなる」こと。「ありうる」を、ある/ないの決定において考えるのではなく、あってもなくてもいいという「非決定」においてポジティブに考えること。 イマージュ/ガラスによる相対化。その線引きは、ぼかしてしまおう。 具体的手段として、既存の形式の外に、あるいは隙間に新しい形式を創造すること。作品未満のものにとりかこまれることの「貧しさ」のなかにあって、何かが〈作品として現れてくる〉その瞬間を捕まえること。2025/03/06
櫻井
1
気軽に読めるエッセイ集として手に取ったら結構歯ごたえあり面食らったが面白かった。ドゥルーズ、ベルクソンとの取っ組み合いを長年回避しているのが見透かされているようで、さすがにそろそろ…という気になった。 また、通読してみるとテーマによって演じ分けるように文体が変わるのも印象的だった。エッセイと批評のちょうど中間のような、世俗的な対象について書かれたものが特に好み。着眼点の独自性が際立つから。2024/12/21
yoyogi kazuo
0
現代美術のレビューは作品そのものと同じくらい理解できないが、身辺雑記的なエッセイはものを考えるときの角度とか感性の練習として使える。2025/02/25




