内容説明
商都大坂、銀(かね)が銀(かね)を生む世の実相と、色と欲に翻弄される人たちの生態をリアルに描いた井原西鶴。伝記もなく、ほとんど知られざるその実像を、作品の行間から、また同時代の遊女評判記などから鮮やかな手付きで攫みだし、西鶴が生きた「時代」と「場所」を臨場感たっぷりに現前させる。中勘助、釋迢空など、評伝に新境地を拓いた作者の批評精神が最高度に発揮され、伊藤整文学賞、大佛次郎賞両賞を受賞した傑作。
西鶴は俳諧師から身を起し、後に浮世草子の作家になったという通説を見事に覆し、西鶴が生きた時代と場所を臨場感溢れる描写で追体験。評伝に新境地を拓く傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
29
【富岡さん追悼読書7】35で妻を亡くし自由人となった、俳諧師井原西鶴が41から51で死ぬまでの10年間に描いた「浮世草子」…当時はそう呼ばれた物語の数々は、富岡さんによるとむしろ明治の坪内逍遥が「小説」と名づけた、近代の自我、そして世間や廓との関係、社会を絡めた人間模様。たった200ページ余りにまとめられた深い深い読みにずっしりと感動します。元禄の実在の女方役者上村辰彌と光源氏をミックスしたような西鶴オリジナルキャラの世之介の成長物語「好色一代男」。女郎に溺れ破滅した1人の男の生涯(続く)2023/05/11
かふ
17
東京の粋(いき)は大阪のすい(同じ粋と書く)に始まり、それが西鶴だったという。西鶴は妻が死ぬと隠居する。そして俳諧を始めるのだが、最初は追善供養のために百韻独吟をしたのが面白くなって千句とか独吟してそれを商売にして、芝居見物とかの役者と遊ぶのが遊び人として、一代で金を使いはたす『好色一代男』の浮世草子を書いたりした。それも女形で有名だった役者の自殺が影響していたとか。女形は若いうちが花で年を取ると出来なくなる。それが刹那的な生き方として大阪人のすいになった。それを明治になって東京の作家が西鶴を再発見した。2026/02/01
糸くず
7
溝口健二『西鶴一代女』に感じていた違和感が解きほぐされた。『好色一代女』の主人公は題名のとおり〈「生殖」にかかわらぬ一代女〉であるから、「親子」「家族」といった関係性に拘束されないひとりの女性として、つまり「個人」として生きたのである。しかし、溝口が描いたのは、世間のしがらみに囚われて「個人」として生きることのできない女性の悲劇であって、「感傷の贅肉」によって作り変えられている。こう考えてみると、西鶴は早すぎた「近代」の作家だったのかもしれない。2020/05/01
isbm
0
★★★2017/05/21
笠井康平
0
解説や要約のさじ加減に優れた本です。西鶴の略歴を知ったあと、学術畑につまれた先行研究へと向かうまえに読むのがうってつけです。論文の束を消化したあとだと、ちょっと物足りなく感じてしまうかもしれません。2013/07/05
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