内容説明
「吉原細見」や歌麿の大首絵の版元として大成功した重三郎だったが、歌麿の裏切りで苦境に立つ。代わって起用した老人・写楽の絵は大評判になったが、老人は病で死んでしまう……。蔦重と写楽の真実に迫る長編歴史小説。《解説・砂原浩太朗》
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
91
江戸中期の版元・蔦屋重三郎の生涯を描いた小説の復刻版。史実を程よく織り交ぜた雰囲気のある時代小説で、江戸情緒に満ちた人間模様をしっかりと味わえた。本作の蔦重に派手さはない。内省的で感情をあまり出さないのは幼少時の境遇の影響が大きいか。肉親よりも周りの粋な大人たちに彼の成長が促された感じだ。若い頃の覚束なさと優れた洞察力が混在する妙味も目を引く。彼の人間味を素直に引き出すおしのとの関係も物語に情感を添える。最後は題名に込めたものに感じ入った。本作を読み、幕政や独特な作家陣との絡みの細部に興味が湧き上がった。2024/12/01
coldsurgeon
8
視点の数だけ事実はあり、歴史は生まれる。蔦屋重三郎の姿を描く視点はいくつもあり、それ故に、違う物語を追うことが出来る。この作者による蔦屋重三郎の生涯は、一つの物語を生み出し、東洲斎写楽の正体を、新たに設定することにより、終盤を盛り上げる。そして重三郎が愛し続けたひとりの女性と、慕い続けた父親の面影が、物語を分厚くする。2025/03/04
舟華
4
現在の大河の主人公、蔦屋重三郎を主役に据えたお話。史実の中にうまいこと写楽の姿を描いたものだなぁと膝を打ってしまった。なるほどこういう見方もなくはないのか。大河を見ていて知った名前もたくさん出てきたので、これからの放送はこの本を読んで知った人が出てくるのかもしれないと思うなど、両者を連動させて楽しめた。この作品がはじめて出たのが30年前だということに驚き。2025/03/22
小寅
1
麒麟がくるから、大河ドラマと近しい本を1冊は読んできた。今年は、この本を本屋で見かけ、読むことにした。べらぼうの蔦重とも先月、歌舞伎座でやっていたきらら浮世伝の蔦重とも違う蔦重。べらぼうやきらら浮世伝の蔦重は明るく、力漲って時代を切り開く感じが好きでべらぼうを楽しみに観てる。けれど、この作品の蔦重は正反対。書く人によって、違うのは、わかるけれど、自分のイメージとは違うなぁ、と。こういう、話もあるんだなぁ、と。驚いたのは、昭和58年の作品だったことにも驚いた。2025/03/20
く~まにゃん
1
説得力の有る一説。しかし、余りにも早過ぎる蔦重の死は、惜しまれる。2025/03/10
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