内容説明
“主権”と“人権”の根源を問い、両者の間の密接な相互連関と緊張を繙いた本書刊行から30年の時をかけて――2022年にフランスで刊行された論文集の序文一部を日本語に書き下ろしたものを新たに加え、現在の著者の想いをあとがきにしるし、近代立憲主義を再定位する増補新装版としてお贈りする。
【主要目次】
はじめに
第Ⅰ章 西欧立憲主義の再定位
第1節 フランスの知的伝統とその変化
第2節 人権価値の復権とそれへの懐疑
第Ⅱ章 二つの国家像の対抗
第1節 近代憲法史にとってのフランス革命
第2節 問題点の検討
第Ⅲ章 二つの自由観の対抗
第1節 《R publicain》と《D mocrate》の間
第2節 国家からの自由と国家干渉を通しての自由
第Ⅳ章 「公共」の可能性とアポリア
第1節 〈citoyen〉の可能性
第2節 日本国憲法下の〈公〉と〈私〉
補論 《Valeurs et technologie du droit constitutionnel》(2022)の序文要約
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
261bei
2
90年代の著者の論文集が再刊。国家による個人の創出というこの頃著者の取り組んだテーマについて、特に「ルソー=ジャコバン型モデル」国家論に対する様々な立場からの批判に対する応答が行われている第2章が面白い。一般的な語彙を用いれば、共和主義か多元主義かという国家論の選択が扱われていて、著者は前者を強調している(他方、多元主義国家論にあたるのが高見勝利)わけだが、他方、著者が心底前者に乗っているのかという疑問もある。著者は中間団体の存在を所与とした上で、中間団体排除の痛みの「追体験」が必要と言う。体験ではない。2025/07/05