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内容説明
ある冬の夜ふけ、測量士Kは深い雪のなかに横たわる村に到着する。城から依頼された仕事だったが、城に近づこうにもいっこうにたどり着けず、役所の対応に振りまわされてしまう……。絶望せず、へこたれない測量士Kの奇妙な、喜劇的ともいえる日常のリアルを描いたカフカ最後の未完の長編。最新の史的批判版にもとづく解像度の高い決定訳で贈るカフカの最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
市太郎
41
新訳にて再読。最初から不穏な空気感は漂っているが、独特のユーモアがあって前半はそれなりに楽しく読めるが、後半になるほど登場人物の長い独白がメインとなり、またそれが愚痴っぽいので、段々と読んでる方は暗い気持ちになる。物語もどんどんと沈んでいくようで、wikiに載ってるカフカのラストの想定を鵜呑みにすると本当に救いのない物語。この世の不条理を受け入れていく主人公。よその者を疎外するというより、村の独特のルールからはみ出したものをシカトする民達の様子は、異様にも映るがこれこそが真実なのだと嘆息。城とは何なのか?2025/03/06
優希
38
ある冬の夜更け、測量士Kは雪の中の村に出向きます。城の測量の依頼のためですが、城に近づこうとも一向に到着しないのに奇妙な風景を見たようでした、役所の対応に振り回されるK。不条理な日常のリアリティがここにはあるのですね。不穏な空気ながらも喜劇的な映像が浮かんでくるようでした。未完の作品ですが、完成していたらどのような風景を見せてくれたのでしょう。2025/03/20
おにく
34
光文社版は、カフカが原稿ノートの文章の区切りを章として分けた“史的批判版”を底本にしていて、これにより各エピソードがより印象に残り、住人それぞれの腹に抱えているものが浮き彫りになって見えました。改めて読んでみると、誰より風変わりなのは、村の住人よりむしろK自身で、測量士という自身の役割を認めさせるため、彼は色んな人と衝突し、頑なにこの村に留まろうとする。そんな姿は、彼の過去を何となく想像させられます。人の価値は、役職や肩書で決まるものでなく、人柄の大事さを気づかせてくれました。2024/12/31
おだまん
11
いま楽しめる不条理小説の礎といってもいいのではないかしら。わけわからないけどそれを楽しむ耐性ができたから読めたのかも。未完は惜しいけれどかえって結末がないほうが救いがあるかもしれない。後書きよいです。2024/11/30
田中峰和
6
測量士Kが城を訪れるが、自分の仕事が必要ないと知る。2人の助手と合流するが彼らは全くの役立たずで、ホテルの女将や村長など誰もまともに相手にならないものばかり。城が神であって、その神とのつなぎ役が役人のクラムが神の子クリストと考えれば納得しやすい。そして、クラムには直接会えず、彼の秘書モームスが連絡役を務める。この秘書こそモーゼのもじりでないのか。延々と続く城へのアプローチは報いられない。きわめて、宗教色の強い物語で、一神教の考え方が根底にあって、多神教で仏教徒の日本人には理解しにくい内容だと思った。2025/03/01