内容説明
フードデリバリーの冷めたシチュー、北欧家具店のミートボール、激安居酒屋の肉寿司……
タワマンを遥か頭上に見上げ、気鋭の文筆家が都市生活の不満を嘆く憂鬱グルメ小説。
食事はいつもおいしくて満たされて幸せ、なんてやっぱり嘘だった。
--高瀬隼子(『おいしいごはんが食べられますように』)推薦!
体調を崩した私は初めてデリバリーを注文するが、届いたシチューからは独特の冷えて固まった油のような匂いがして……(ゴースト・レストラン)。10年ぶりの同窓会、クラスのLINEグループに「完全個室創作和食バル★肉寿司食べ放題! 3時間飲み放題付き2980円」の食べログURLが送られてくる(Girl meats Boy)。おいしくない食事の記憶から都市生活のままならなさと孤独を描く、憂鬱なグルメ小説13篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
61
最初面白いと思いましたが、このような話が続くと、段々気持ちも下がってくるようです。次第に読み辛さのようなものが生まれてきました。外食時のお店選びは、重要なミッションであり、誤るとその日一日不幸がついて回るような気持ちになります。だから気に入ったお店は何度も通うようになります。2024/12/29
はっせー
55
今年読んだ小説のなかでもトップクラスに良かった作品であった!美味しくない食事を描いた小説。どの作品も読んでいて自分にも似たような経験あったかもと思える。こんなにも食欲が湧かなグルメ小説は初めてであった!出てくる話としては、油っぽい生クリームが入ったクレープ。ケミカルラーメンと呼ばれる学食のラーメン。などなど。どの話も面白い。読めて良かった作品であった!2024/10/29
カノコ
21
美味しくなかった食事をテーマにした作品集。デリバリーのどろっとしたスープ、安居酒屋のぺらぺらの肉寿司、食感の悪い人工肉。読んでいるだけで食欲が減退していくような料理ばかりが並ぶ。物語性や展開の起伏に乏しく、誰かの日記のよう。気分が盛り上がる話ではないのでどうしたものかと思いながらページを捲っていたが、登場人物たちの表情が見えてきたところで徐々に楽しくなってきた。頼んだごはんが美味しくない、という誰しもが経験したことのある身近な不幸を、ユーモラスに描いている。世に無数とあるグルメ小説の逆をいく痛快さ。2025/05/10
まり
17
図書館本。美味しくないご飯ばかり出てくるっと覚悟して読んだけど…美味しくはないけど、めちゃ気持ち悪そうな食べ物とかではなかったので大丈夫だった。不味いと思った食べ物でも他の人は美味しく思えたりもして…面白い。話もいろいろと繋がっていくのも良かった。2025/06/15
fabi@第一芸人文芸部
13
『華麗に文学をすくう』企画(小説+小説内に出てくるカレーをレトルトカレーとして発売)の小説が面白過ぎて、もっとこの人の小説を読みたいと思って手に取った。めっちゃ面白かった。帯に『憂鬱グルメ小説』とある通り、美味しくなかったものについて書かれている連作短編集。なにより美味しくないものに出会ったシチュエーションが面白い。ほぼみんな「ひとり」なのだ。「美味しくない」ことを誰とも共有できないが故に、口に合わない食べ物ときちんと向き合ってしまっている。「まずい」という言葉を使わずにここまで描写できるのもすごい。2025/04/02