内容説明
世は大正。華族である堀井男爵が、何者かに殺された。
自称“ハードボイルド”私立探偵・平島元雪は、
「華族殺し」の犯人を突き止めるため独自調査を開始する。
未亡人となった堀井夫人の愛猫探し、噂の怪人“ムカデ伯爵”と失踪したバスガールの行方、
堀井家に現れる“黄金幽霊の首”の謎……
無理難題を突きつけられる平島の前に、美しき年少浪曲師・真鶸亭湖月が現れる。
湖月は平島から投げかけられる事件の手がかりと、実在の説話・伝承を元に、
即興で創り出す奇想天外な物語〈カタリゴト〉を披露していくが――。
その〈謎解き〉は単なる騙りか、はたまた真相への糸口か?
帝都を舞台に繰り広げられる大正推理奇譚、ここに開幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ettyan えっちゃん
13
角川ホラー文庫から出ているので、ホラーかなと思いきや立派なミステリでした。 いわゆる三題噺のような語り事生業とする少年浪曲師によって、探偵の追いかける謎が語りなおされていく。 生き返るゾンビ、消えたバスガール、黄金を吐く生首と・・・これらの謎がやがて大きな一つのカタりごととして・・・と本当によくできた面白いミステリだった。 続きがありそうな終わりになっているので、人気が出て今後もシリーズ化するといいなあ。2024/11/24
銀華
10
大正時代、憧れの人が殺害された華族殺しを捜査したい元華族の探偵、舞い込む依頼とそれを解釈する美少年浪曲師の語りによって一つの結末へと収束していくーーホラーじゃなく摩訶不思議なミステリー連作短編と見せかけた長編。元々ある話を三題噺の素材として物語を紡がれる少年浪曲師の講談らしき話が結構面白かった。その分野は浅学な上に浪曲師のことも知らずもう少し説明が欲しかったのが本音。全体としては刺さらなかったけど、明朗な登場人物も良く、探偵が浪曲師に向ける感情は只のファン心境じゃないよなと思いつつも楽しませて貰いました。2024/11/14
イツキ
8
面白かった。探偵としてやっていこうとする元華族の主人公が依頼された事件や不可思議な出来事を浪曲師の美少年が語ることで物語のような不思議な話をし、その後にそれに道理を通した話として語り直すという構成が新鮮で面白く、カタリゴトの文体は独特なリズムが感じられて読んでいるだけで心地よさが感じられました。シリーズ化してほしい作品ですね。2024/11/04
うさみP
7
語られる金を選ぶか、語られる物語を選ぶか。レトロディテクティブが頼るのは、奇妙な話、筋が通らない話、腑に落ちない話、お客様から投げかけられる一風変わった三題噺を表を語って裏をカタリ直す、シャン、キン、と某巷説のような憑き物落とし。名探偵の振る舞いとは、誰もが成れる無自覚なモノなのかも。『お兄さん』と蠱惑する、湖月くん(♂)でいいんだよね、いいんだよね!!♂でも♀でもいいけど。謎よりも癖に刺さるのは流石。2024/12/01
かぐつち
6
小さな事件の積み重ねが大きな事件を解決へと導くタイプ。謎の美少年の巧みなカタリは真実よりもドラマチックで美しい。続編が欲しいです。2024/11/10