内容説明
猫のムルは生まれたての子猫の時、稀代の知識人にして奇術師アブラハム氏によって、橋の下から拾いあげられ、大切に育てられた。アブラハム氏の家にいるあいだにムルは、氏が書き物をするそば近くに陣取って、読み書きを習得したのだった。そして、自らの人生を回想する原稿を書き始めたが、羽根ペンで書いては、近くにあった一冊の本、『楽長ヨハネス・クライスラーの伝記』のページをちぎり、吸取紙や下敷きとして原稿にはさんだのだった。いざ、原稿を出版する運びとなった折、印刷所が、はさまれた『クライスラー伝』をうっかりそのまま組み込んで印刷してしまったというのが、本書である。つまり、牡猫ムルが自らの人生を語っている文章のそこここに、音楽家クライスラーの伝記が、はさみ込まれているという二重構造の物語(二重小説)なのである。猫が主人公の動物小説であり、怪奇小説であり、犯罪小説であり恋愛小説でもあるという贅沢なこの物語は、当初は全三巻を予定していたのだが、著者ホフマンの死によって、第二巻で未完のまま終わっている。
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- 評価
ななほし本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
55
本書は聡明な牡猫ムルの自叙伝という体裁である。しかし、その時にインク吸い取り紙として「楽長ヨハネス・クライスラーの伝記」もくっ付いている多重構造。ムルの伝記が、クライスラーの伝記の中に内包されているようにも思えて面白い。最も結構、自惚れが強くて無謀なムルの自己弁護には苦笑してしまったが。後、ムルに対しての編集者の「表現のパクリはあかん!」というツッコミが可笑しすぎる。ホフマンの急逝で未完となってしまったのに歯噛みするしかない。当時の読者も「どうしてもこの本の続きが、続きが読みたい!」と切実に願っただろうな2025/06/05
TATA
20
いわばドイツの古典的作品。だんだんと調子が出てきたところで図書館の返却期限到来。真ん中に差し掛かった辺り。後日読み直します。2025/12/27
練りようかん
15
訳者きっかけ。序文からホフマンの満足気な顔が浮かぶユニークな二重構造に興味引かれた。気高く利発で詩心のある牝猫の一人称があの“吾輩”を想起して馴染みやすい。音楽家の伝記が挟まれるタイミングの奔放さに驚きながらも大胆さが楽しくなり、前半は話の筋を横に置いてという読み方に。しかし読み書きできる猫と権威を不要とする音楽家の心地良い居場所に意識が向くと、動物と人間の意思疎通はありで、人間と人間はなしかと思えてくる悲しくも納得できてしまう定理が浮かんだ。本作は未完。酒寄氏は本当に“奇”がお好きですね。2025/11/21
おだまん
13
昨年岩波文庫版で非常に難儀したのがうそのように読みやすい。ホフマンの奇才ぶりをしっかり堪能できて満足。こうなると最終巻まで読みたかったなぁ。2024/12/27
Malos
8
神から授かった言葉で神を讃えるのは罪なことでしょうか?2025/03/28
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