内容説明
「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」
ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。
非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のために、ないがしろにされる科学――。
地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
南海トラフ地震については以前からかなりの確率で起きるということが言われてきました。その都市伝説のような話をきちんと整理してくれたのが東京新聞連載のこの本です。南海トラフ地震や富士山噴火のメカニズムについて解説してくれるのはありがたいと思うのですが、識者がその確率をいかにも本当であるかのように言うのは大手マスコミが地震連絡会や政府に忖度するような感じでジャニーズと同じような感じを受けました。それよりも今回の能登半島地震や、千葉県の地震の予知の方が重要だと思いますが。いい本でした。2024/03/23
きみたけ
79
結構衝撃的な内容で驚きました😮著者は、東京新聞東京社会部科学班の小沢慧一氏。南海トラフ地震について政府が発表した「発生確率」は、実は科学的な根拠が薄かった。政府の地震調査委員会の分科会に所属する地震学者らは「時間予測モデル」が怪しいと知りながらそこに科学のお墨付きを与えていたことを指摘。学問の恥部を暴く痛快ノンフィクション。これまで沢山の南海トラフ地震関連の本を読んできたが、モデルの原点とも言うべき室戸港のデータが、かなりいい加減だったことに驚きました。2025/10/15
よしたけ
59
30年以内の発生確率8割とされる南海トラフ地震が根拠薄な論理によるもので2割程度の可能性がある。地震予測標準は過去発生間隔に基づく単純平均モデルだが、南海トラフはプレート歪み具合に基づく時間予測モデルにより、裏付け論文の根拠が弱く、江戸から明治に収集された不明瞭なデータに基づくという。多くの著名学者も疑問を呈したが、役人から「確率を下げると防災意識下がる」と圧力が。災害備えは重要だが、国民は正確な数字・根拠を知る権利があるし、他地域が相対的低確率に見え防災意識に影響する弊害もある。今後の動向を注視したい。2024/04/03
ぐうぐう
40
人は安心を求めるものだ。安心したいという強い意識がバイアスを生じさせ、間違った方向へ自身を導いてしまうことがある。それにブレーキをかけるのが科学であるはずなのだが、その科学が怪しさを伴っているとすれば……。本書は、30年以内に70〜80%の確率で起こるとされる南海トラフ地震が、高い確率を出すべく、特別な方法で算出された数値であり、他の地震の発生確率と同様の方法で計算すれば20%程度に下がることを暴いている。採用された予測モデルの危うさもさることながら、(つづく)2023/10/25
山口透析鉄
38
市の図書館本で。この連載、東京新聞でも読んでいましたが、8/8の地震で南海トラフの話が出たこともあり、改めて借りて読みました。 地震予知の不可能性は以前から指摘されていた通りで、阪神淡路大震災にしても東日本大震災にしてもこの間の大きな地震、誰も予知していませんでしたし、本書に出てくるゲラー氏も同様の考えでしょう。予算獲得のための研究もありがちで、核融合発電等の研究と同様の問題があります。 非常に真っ当な調査報道の好例で、こういう記事も載るので2000年から東京新聞は購読しています。(以下コメント欄に)星52024/08/22




