出版社内容情報
没後100年が過ぎ、なおその文学的先駆性と言語表現の豊饒さで魅了するヘンリー・ジェイムズ。中短篇から選りすぐった傑作選。没後100年が過ぎ、なおその文学的先駆性と言語表現の豊饒さで魅了するヘンリー・ジェイムズ。中短篇から選りすぐった傑作選。
モーヴ夫人
五十男の日記
嘘つき
教え子
ほんもの
解説 行方昭夫
年譜 行方昭夫
ヘンリー・ジェイムズ[ヘンリー ジェイムズ]
著・文・その他
行方 昭夫[ナメカタ アキオ]
翻訳
内容説明
十九世紀的世界観を脱して新たな文学技法を追究し、現代文学の礎となったH・ジェイムズ。多様な解釈を許す作風から難解なイメージがつきまとうが、読む人、読む時代により素晴らしさが再発見され続ける、稀代のストーリーテラーでもある。百を超える作品から、リーダブルで多彩な魅力溢れる五篇を厳選、複雑と謳われる文学世界を味わい深い見事な日本語で贈る、決定版。
著者等紹介
ジェイムズ,ヘンリー[ジェイムズ,ヘンリー] [James,Henry]
1843・4・15~1916・2・28。小説家。アメリカ生まれ。プラグマティズムの哲学者ウィリアム・ジェイムズは兄。幼時からヨーロッパ滞在が長く、ハーバード大学へ入学するも中途退学し、1876年にロンドンへ移住して以降、本格的な執筆活動に入る。最晩年にはイギリスに帰化するが、翌年、ロンドンにて死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白玉あずき
30
心理描写、人間観察が評価されているらしい。そのためのシチュエーション設定。新しい小説表現として画期的だったのかもしれないが・・・・退廃的で官能的なフランス人 vs. 率直で清教徒的道徳観のアメリカ人、純粋で世間知らずな若者と世知に長け人間を斜めに見る「独身の」高齢者といった、人間の単純で画一的なパターン化がちとうっとうしい。語り手自身にかなり偏向した思い込みがあったりするので、これが著者の思いこみなのか当時の読者に迎合したものか、はたまた人の自己正当化を揶揄してるのか。まあ当時の思潮、世相は楽しめました。2019/05/25
星落秋風五丈原
26
『マダム・モーヴ』は『ある夫人の肖像』のリベンジ篇と言える。夫が変に純愛にこだわらずラブアフェアで留めておけばおきなかった悲劇。『五十男の日記』は自分の失敗談を話して「その恋愛やめときなさい」と忠告する男が正しいかに見えて…あえて視点を動かさないことが功を奏している。2021/03/27
くさてる
24
百本に及ぶ中短篇の中から厳選された五本が収録されたもの。これが本当に面白い。人間性の複雑さと他者との関係性によって生まれるドラマは、時代と国境の壁を越える面白さを生むのだなあと感じた。ラストに至るまである意味でなにも起きない「モーヴ夫人」のスリリングさと、現代にも存在しそうな空虚で高潔で無力な人々を描く、なんともいえない後味のある「ほんもの」の二作がとくに心に残りました。2017/10/22
みつ
23
5篇を収録。全体で400ページ超の文庫本なので、中篇とかなり長めの短篇。うち「ほんもの」のみ既読。「モーヴ夫人」「五十男の日記」はいつものジェイムズの流儀で、独身男が異国で体験する一種の恋愛心理小説。人物設定まで含めまだるっこしさはやはり否めない。面白かったのは、過去に思いを寄せた女性の夫の肖像を描く画家の意図が語られる「嘘つき」、虚栄に満ちた一家の中で輝く少年の家庭教師の話「教え子」、挿絵のモデルになることを申し出る元は立派な「ほんもの」の経歴を持つ夫婦と職業モデルが対比され、滑稽で悲哀に満ちた最終作。2024/06/26
拓也 ◆mOrYeBoQbw
23
中短篇集。『鳩の翼』『黄金の杯』等の傑作長篇が有名なジェイムズの中短篇5作を収めた一冊です。夏目漱石が挫折した難解の長篇とは違い、収められた作品は難解さが抑えられ、尚且つ心理描写の妙と、人称・視点の上手さは後期長篇と比較しても引けを取らないと思います。この本は幻想的な作品は省かれ人間関係と愛憎劇、そして芸術に関するリアリズム寄りの選になりますが、そこはコンラッドと同じく、物語の文法と語りの上手さ。一見メロドラマの様なあらすじも、精妙な対話劇と心理劇と化すのが驚異的ですね~(・ω・)ノシ2018/04/25