内容説明
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ホメーロスの『イーリアス』は、トロイの木馬でよく知られているトロイア戦争における人間の英雄の物語であり、世界最古の、また、世界最高の西洋古典文学である。イーリオス(トロイア)を舞台にして、ギリシア軍とトロイア軍の英雄たちの実にすさまじい戦い、そして、英雄どうしの熱い友情の交換が繰り広げられる。そして、また神話上の神々が登場して、物語の展開を左右する。
訳者の小川政恭は、『ギリシア文化の流れ』(本書下巻に掲載)において、以下のように述べている。
「神話や英雄の物語は、王や貴族が支配した英雄時代にできた。それらを王の広間で吟誦詩人が竪琴の伴奏で物語るのを、人々は夢中になって聞いて楽しんだ。神々の祭のとき神々の事蹟をほめて歌う詩歌もあり、最初神々をほめた後で吟誦する英雄の物語もあった。神々の讃歌を集めたものは『ホメロスの讃歌』として残っているし、人間の英雄の物語はホメロスの『イリアス』『オデッセイ』である。」
『ホメロスの讃歌』には、小川政恭訳『ホメロスの讃歌集』生活社(1948年)がある。
こうして伝承されたホメーロスによる詩歌は、『イーリアス』として、紀元前6世紀のアテナイにおいて文字化され、紀元前2世紀にアレクサンドリアにおいて、ほぼ今日のかたちにまとめられたとされている。その昔、『イーリアス』は神話であるとされていた。だが、『イーリアス』の物語を手掛かりとして、ドイツの実業家で、考古学者のハインリッヒ・シュリーマンは、1871 年のトロイ遺跡、1876年のミケネ遺跡、および1884年のティリンス遺跡の発掘によって、『イーリアス』は神話と叙事詩の融合であることを実証したのである。
書評を執筆いただいた伊坂青司先生は、本書について「ギリシア最古の叙事詩にふさわしい格調高い訳と簡潔にして丁寧な頭注によって、読者をトロイア戦争の現場へと導きいれてくれる」と述べている。『イーリアス』のストーリーについては、伊坂先生の書評に、実に簡潔にまとめられている。
目次
復刻版出版にあたって
第一歌 疫病 怒り
第二歌 逆夢 試し 軍船の目録
第三歌 誓い 城壁からの観戦 パリスとメネラーオスの一騎討ち
第四歌 誓約の蹂躙 アガメムノーンの巡回
第五歌 ディオメーデースの武勲
第六歌 ヘクトールとアンドロマケー別れを惜しむ
第七歌 ヘクトールとアイアースの一騎討ち 死体の取り片付け
第八歌 戦闘の中断
第九歌 アキレウスの遣使 嘆願
第十歌 ドローンの段
第十一歌 アガメムノーンの武勲
第十二歌 堡塁の戦い
第十三歌 船体のそばでの戦い
現代に甦るホメーロスの長編叙事詩『イーリアス』―小川政恭訳復刻版の意義 神奈川大学名誉教授 伊坂青司