内容説明
副業先の同僚から小動物の世話を頼まれたモトコ。その後、彼から届くメールは謎解きのようだったが、しだいにパンダと人類をめぐる歴史がひもとかれていく。テロルと戦争の時代に命を預かること=ケアの本質に迫りながら、見えない悪意による暴力に抗うための、小さく、ささやかな営為を企てる問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
174
高山 羽根子は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、小動物飼育代行哲学小説、不穏な作品でした。 飼育している動物群の中に、パンダの赤ちゃんが含まれていても最初は小さいので、判らないかも知れません。 https://publications.asahi.com/product/25034.html2024/10/20
ケンイチミズバ
79
人間の身勝手。散々狩猟、捕獲し挙句に絶滅危惧種に指定。少なくなると価値があがる。経済理論により殺してよかった時代の剥製や毛皮すら高値に。乳牛の皮革を使用した偽物まで登場する始末。世界にパンダの愛らしさがあふれかえる。マスコミが話題にし、人々は観たことを自慢し、グッズを購入したマヌケな時期がある。中国政府による外交手段に使われている今、パンダは生物なのだろうか。駆け引きの道具ですらある。共産党の気分を害したら貸し出し中止、返還を求められる。清朝時代は食べていたらしい。し、そんなに旨くもなかったようだ。(笑)2024/10/16
fwhd8325
70
高山さんの作品は、今までも読んでいて、どこか心に刺さるものを感じています。作品に、社会が描かれていると思います。それがスケールの大きいものであっても、無理に力を入れずん淡々と描いている。それが高山流だと思っています。この作品にも淡々とではあっても、環境だったり、そこから派生する生態系だったりと、ふむふむと思う内容が描かれていて、さすがだなと感じました。2024/11/23
もぐもぐ
52
古い映像のアーカイブデータを地デジ放送用に編集する仕事をしながら、副業でカラオケ店のバイトをする篠田モトコ。彼女はバイト先の同僚の村崎からある事を頼まれる。自分が不在の間、自宅の生き物”たち”の世話をして欲しいと。生き物を、命を預かるという事、自分も犬を飼っているがそれが持つ責任や重さをふと考えてしまった。世界を流転する村崎とモトコのメールのやり取りはすごく高山さんらしい雰囲気。作中で語られるパンダと人間との関わりの歴史もとても興味深かったです。 #NetGalleyJP2024/10/07
とよぽん
42
さすが高山羽根子さん、という感じで読み応えのある作品。キーワードはたくらみ。序盤はパンダが作品の中でどんな位置、意味があるのかわからずに読んでいって・・・。日本や世界の近現代史とも関わりをもたせながら、人間を含む生き物について考える主人公に伴走しているかのような読書の時間だった。2024/12/09
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