内容説明
社会とは神が人間に与えた秩序であり、その安定と維持こそが中世キリスト教世界における政治であった。ローマ教皇と神聖ローマ皇帝という二つの中心が社会的機能と責任を担う。だが、時に激しく対立し、グレゴリウス改革や叙任権闘争を極点として、統治の本質が根底から問われる事態へと発展する。聖書解釈に基づく両者の理論対決は、政治思想の錬磨を促さずにはおかない。普遍的で超越的なものを志向する意志と密接不可分な「合理性」がここに芽生え、やがてそれがヨーロッパ人の思惟構造を形づくっていくのである。中世の核心を伝えるだけでなく、近代の性格をも照らし出す類まれな講義。
目次
序章 日本人にとってヨーロッパ中世とは? /第I章 ヨーロッパ・キリスト教的政治圏の成立/1 権力正当化原理としてのキリスト教/2 キリスト教社会の成立──西ローマ帝国の復興/3 キリスト教と政治/(1) キリスト教の政治に対する親和性/(2) 普遍性を志向する宗教/(3) ラテン・キリスト教の政治思想史的意義/第II章 「普遍」の確立/1 グレゴリウス改革・叙任権闘争/(1) 改革以前/(2) 改革以後/2 普遍的秩序/(1) 神的秩序と自然的秩序/(2) 目的論的存在論──存在と価値の階層的秩序/(3) 現世における普遍/(4) 皇帝権と教皇権/第III章 「特殊」の発生と展開/1 アリストテレス政治哲学の影響──「種」の自己展開は善である/2 法──普遍と特殊の結節点/(1) ゲルマン人と法/(2) 法・世界・人間社会/(3) 法と封建社会/3 封建王制の独立──政治的「特殊」と「普遍」のパラドックス/(1) 領域支配・主権/(2) 王は彼の王国内において皇帝である/(3) 「ナショナルなもの」の生成/(4) 「公」の再発見/4 マルシリオ・パードヴァ/第IV章 中世の終わりの始まり/1 公会議運動──その政治思想的意義/(1) 運動の諸相/(2) 公会議運動の立憲思想的意義/(3) 共同体主権/(4) 思想の構造化/2 教会の政治化/(1) 教皇君主制の展開/(2) 宗教改革への助走/参考文献/あとがき/文庫版あとがき
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