内容説明
メモリ16KBの青春がよみがえる。サブカル満載、大人のロードノベル
語り手“ゲンさん”「胃袋だけは十年前と同じで老けてないのかな」
年上の友人・武上さん「クラウドってのは、なんなの。なんか、たまに聞くけど」
その引きこもりの甥シンスケ「昭和のオタクは、足だけは丈夫なんです」
人気漫画家の亀谷さん「すごくいい話ですね」
――新幹線、自転車、バス、テスラに乗って、おかしな一行は旅に出る。
震災被害者の形見のMSXパソコンが過去と現在をつなぎ、思いもよらぬ光が未来を照らす。
イーロン・マスクやホリエモンにはならなかった、あのとき無数にいた「僕たち」の物語。
千葉雅也氏推薦!
「何かが残る。残らないものもある。忘れられたものが回帰する。歴史とは、「どのように保存するかの歴史」だとも言えるし、文学もそのメディアのひとつだ。長嶋有の新作は、情報とモノの置き場が劇的に変わっていったこの約半世紀、すなわち「パソコン以後の世界」の本質を、静かに描き出そうとする。」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙新潮部
60
第1話には読み友さんが出てきてその行動力たるやファンの鑑だと思いました。さて、5作品のうち「シーケンシャル」が特に興味を惹きました。主人公たちは高校でパソコン部に所属し、時代の証人のようにパソコンの歴史を語ります。当時パソコンを使う人イコール、オタクと呼ばれパソコンのメモリは16キロバイト、バードディスクは10メガバイト10万円でした。それを思うと技術は飛躍的に進歩していると感じます。進歩することがダイレクトに幸福に結び付いていた時代とも思いました。2025/06/24
ネギっ子gen
53
【異なる二つの道行は、図らずも「自分探し」の旅だった?】おかしな一行が旅に出たお話。符合するワードはMSXだ。<今の時代は古いものでも、本当に淘汰されてしまうものと、生き残る古いものとあって、それぞれ「なぜ」か分からない。レコードは今、若いミュージシャンも新譜をリリースする。VHSのビデオはほぼ淘汰されてしまった。カセットテープは生き残っている>など、膝打ち衝動が止まらない記述が続出。なぜ、この本は読みやすく面白いか。なぜ、この作家の文体(というか書き方)に惹かれるか。2種類の「なぜ」が同時に思われる。⇒2025/05/07
えみ
50
その思い出は保存する?あの記憶は削除する?かつての最先端を思い出しノスタルジーな気持ち浸る。そんな懐古の情を楽しめる、あの頃青春を謳歌していた全ての大人にお薦めできる一冊。アナログレコード、蓄音機、そしてMSXパソコン‥等、最近はレトロブームも相まって再注目されているとかいないとか。この小説の面白いところは、ひとむかし前と言われる過去の最先端が、現代の最先端と同じ土俵に置かれて語られていること。時代は進む。人は否応なしに最先端をアップデートされていくということを目の前で繰り広げられる会話で実感させられた。2024/12/30
ひらちゃん
44
ドリフのニンニキニキニン、思わず懐かしーって呟いちゃったわ。そうねー昔は「パソコンはやる」だったかも。一番最初に触ったパソコン教室のそれは、今とは全然違ってたし。勿論良く分からなかったのだけど(今では何でも簡単に出来ちゃって便利!)今では普通にクラウドなんて言ってるけど、説明しろって言われても無理。知り合いの甥っ子の引きこもり中年とか、友達の不登校の子供とか、昔からの知り合いとか。細い糸が、古いパソコンで繋がって。更新する波に呑まれても、古き物を使う楽しみも良いものです。2024/11/02
しゅう
35
5篇からなる連作短編集。長嶋有はデビュー以来ずっと追っかけてきたお気に入りの作家だが、今回は読むのに難儀した。そもそも話の中心であるところのパソコンというものに全く関心が持てないのだ。型番とかもいろいろ出てくるが、もうちんぷんかんぷん。ラストの表題作にはテスラが登場するが、これも完全に興味なし。車にも関心がないため車体の描写とか読んでて辛かった。ある人たちにとっては素敵な小説なのかもしれないが私には今回ばかりは縁がなかったということで。2025/03/01