内容説明
本格ミステリ×捕物帖! 大胆トリックの意欲作
本所一帯を縄張りに、十手を預かる若い岡っ引きの佐吉。
「相生町の親分」と呼ばれた亡き父の人徳で、周囲の人々に顔を立ててもらってはいるが、いまだ自分の生業に自信が持てずにいる。
ある朝、大川で若い女の死体があがった。裸に剥かれ、真新しいあざと傷だらけ。顔は腫れあがり髪まで剃られているという惨たらしい有様だった。
佐吉はさっそく女の身元を調べ始めるが、いくら聞きまわっても杳として知れない。
下手人は誰か。それ以前に、殺された女はいったい誰なのか?
町医者の秋高とタッグを組み、突き止めた事件の真相とは――
新婚早々に殺された妻と消えた夫。
死体のそばに二十四文銭を残す辻斬り。
寿命が尽きる寸前に殺された男……
男たちの意地。女たちの覚悟。執念と因縁が渦を巻く。
江戸を舞台に仕掛ける大胆不敵なトリック。
著者渾身の時代物本格ミステリ連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
173
令和に捕物帳を書くからには、それなりの意味付けと新しさが求められる。従来は主人公が単独で推理し犯人を捕らえていたが、今回は岡っ引きの佐吉と医者の秋高のバディで犯罪解明を担う。佐吉は特に頭脳明晰ではなく、秋高の医学知識に基づく推理を受けて不審点に思い当たる。加えて各編ではDV、不倫、ジェンダー、引きこもり、同性愛など現代でも難しいテーマを取り入れ、江戸の庶民の思いや苦しみを描くスタイルをとっている。しかも犯人が判明してもあえて捕縛せず、誰も傷つかぬ配慮を優先するのだ。工夫は認めるが、生ぬるさは否めなかった。2024/09/23
ちょろこ
129
堪能、の一冊。時代捕り物帖という名の本格ミステリ。主人公は年若い岡っ引きの佐吉。小料理屋の手伝いと岡っ引きでゆらゆら成長途中の彼の元に舞い込んだ5つの事件はどれも不可解なものばかり。その事件を町医者の秋高と紐解いていく過程は見事に面白い。一つ一つ重ね合わせていく佐吉たちの推理。と同時にまとわりつく座りの悪さ。それらを存分に堪能しながら真相へとじわじわ手招きされる時間は実に楽しかった。鮮やかな紐解きのその向こうに拡がる事情にちょっと鼻がツン。この時代だからこその苦しみから生まれる諸々の心情まで堪能の幕閉じ。2024/10/29
タイ子
105
捕物帖なので岡っ引きの活躍は当然ながらそこには人間の深い闇があり、運命を翻弄させる業があったりするので話自体が面白い。その上、これが江戸時代を背景にしか書けない部分があってそれが本作を時代小説として面白くしているのは間違いない。主人公の佐吉は優秀な岡っ引きだった父親の後を継いでまだひよっこながら周りの助けもあり頑張っている。佐吉の友人であり、医者の秋高の推理があっての「親分、でかした」の言葉を頂けるのだが…。事件解決までの二転三転、そして真相までの過程がすごく好き。織守さん初の時代小説、続編を待ちます。2024/09/28
たま
78
この作家さん初読み。図書館で偶然見つけ、読メで好意的な感想を見かけていたのを思い出して読んだ。若い岡っ引き佐吉が知り合いの医者秋高と推理を交わしつつ殺人事件の謎を解く。江戸時代風俗描写は初々しく、謎解きは結構分かってしまったが、【江戸時代+謎解き】が不思議と新鮮で楽しく読んだ。江戸時代ミステリはたくさんあるが、多くはもっと人情寄り、この作品は謎解き寄りでそれが新鮮だったのかな。殺人事件の隠された背景が現代に通じるものが多く、その扱いも面白かった。織守さん、初めての時代小説だったようだが、続編あるだろうか?2025/07/05
hirokun
77
★4 織守きょうやさんの本は三冊目。時代小説は珍しいとの事だが、時代設定を江戸時代に置いてはいるが、推理小説の香り充分な作品で、岡っ引きと医者がバディになって論理的に推理展開してくれ、推理小説好きには嬉しい。連作短編集であるためか各作品の切れ味もよく、心地よいスピード感でストーリ展開される。今後も是非、時代小説にも取り組んでほしい!!2024/10/13