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内容説明
SDGs、応援消費、カスハラなど、消費者にまつわる用語に注目が集まっている。背景にはどのような潮流があるのか。本書は、一九六〇年代の消費革命から、平成バブル、長期経済停滞、現在までを、消費者を通して読み解く。生産性向上運動、ダイエー・松下戦争、堤清二とセゾングループのビジョン、セブン‐イレブンの衝撃、お客様相談室の誕生などを論じ、日本経済の歩みとともに変貌してきた消費者の姿と社会を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
venturingbeyond
41
戦後消費者史の概要をコンパクトにまとめた一冊。高度経済成長期には「消費者」として、安定成長期には「生活者」として、バブル期以降は「お客様」として消費活動を担うと共に、自らの利害や理念を自覚して生産者・販売者と向き合い、消費のあり方を変革しようとした社会運動史の側面とこれと相対する財界の姿勢や対応の変遷を描く経営史・経済史の側面を手際よくまとめ、読者の認識を深める一冊。高校公民科教員としては、戦後日本経済史の流れの中に、消費者問題と労働問題を整合的に定置し、現代的な課題につなげる視点を確認できた好著でした。2024/11/22
nbhd
21
うむ、けっこうオモシロイはずなのに、いかんせん中公新書テイストの堅牢さだ。60年代以降の日本経済を「消費者」という観点で読み解く本。ダイエーと松下電器の価格設定争い、環境意識の勃興、堤清二の天才的な商売観といった事象を例に肉付けしながら、消費者→生活者→お客様といった像の変遷をたどる。著者の主張のポイントは「行き過ぎたお客様第一主義ってどうなの?」ってことだと僕は読み取った。つまり、お客様のために食品廃棄するし過剰労働するしってどうなの?って話だ。うむ、もっとわかりやすく書いてくれればいいのに。2025/01/03
かごむし
16
本書は、現代日本における消費者の歴史を、言葉の使われ方に注目しながら綴ったものである。消費者という言葉には強いニュアンスがあり、生活者やお客様という言葉が代わりに使われることもある。戦後日本では「消費者=主婦」という見方が一般的であった。1960年代の高度経済成長期、1970年代の石油危機後、1980年代後半から2000年代までの経済停滞期の3つの時代に分けて詳細に検討され、2010年代以降の新たな消費動向も語られる。消費者の利益、権利、責任の観点から、日本経済における消費者の役割が論じられている。2024/10/31
nishiyan
14
1960年代の消費革命から始まり、1980年代の低成長期、バブル景気、長期経済低迷期、現在に至るまでの消費者を通して読み解いた戦後日本経済史。堤清二目当てで購入したのだが、消費者、生活者、お客様と消費者を現すワードの変遷は興味深かった。初期はもっぱら家庭の主婦といった女性を指してた消費者が企業側の変化もあって性別問わないものとなったのは面白い。またセブンイレブンと鈴木敏文の功罪について言及した点は重要だろう。消費者と生産者が相互利益をどうしたら得られるのか。本書を読んでいて深く考えさせられた。良書。2024/12/14
suma2021
12
消費者の関心の変遷から日本経済の移り変わりを描かれた書籍です。消費する人を消費者→生活者→お客様と時代によって立場の変化を考察してます。3章のお客様の章を様々な思いを感じながら読む。サービス業の従事者が増え、消費者がお客様と見られるようになった時代がバブル崩壊後失われた20年と被っているのは興味深い。顧客満足のジレンマに陥ったと考えることは出来る。当時の成功例としてセブンイレブンに触れている。FC制度や非正規雇用などの問題が表立ったのもこの頃であった。昨今の推し活エシカル消費も決して良い方向性とは思えない2025/01/05