内容説明
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「姦通」していた男女が熊に殺された―。
閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。
愛の行方の複雑さを描く傑作長編!
「愛の行方」を書きながら、そもそも「愛」ってなんなのだろうとずっと考えていました。
自分にとって大切な小説になりました。 井上荒野
「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。
―小林七帆
伽 子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽 子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?
―小松原慎一
そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。
―柊レイカ
ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。
―神戸みどり
テントの外には熊が、人食い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。
―野々山純一
装丁 大久保伸子
装画 杉本さなえ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
119
愛するということが、さまざまな方向にこじれていくその姿を見せられた小説だった。舞台は閑静な別荘地。そこの敷地内で遺体が発見されるという衝撃的な事件が起こる。見つけてしまったのは別荘地に定住している散歩中の夫婦。凄惨な現場を見た管理人・小松原慎一は、それが熊による被害であることに思い至り、警察に通報をする。別荘に定住する住民たちと、ふたりの管理人の状況が、それぞれの視点で描かれていくという形をとっている。6組の夫婦が描かれていて、井上さんの、はっきりしないモヤモヤした雰囲気が状況の不安定さを表していた。2024/09/02
ケンイチミズバ
85
夫がいないと清清する。東京に戻りたい。少なくとも仕事部屋としている都内のマンションに。お小遣いでマンションが買えるほどの売れっ子作家の妻。売れない作家ニートの夫。都会を離れることに期待があったあの頃。あの頃は良かった。今は我慢と後悔しかない。同じ思いはそこそこあると思う。後悔、諦め、我慢、不満、物足りなさが渦巻く。久しぶりの文芸らしい文芸で面白かった。別荘地で私たちが思い描くハイソやセレブでは全くない。荒野さんが一人づついやらしく感じ悪く人物造形し創作した、中でも小説家夫婦の内面描写が面白い。構成もいい。2024/08/27
Ikutan
79
別荘地で20代の男女が熊に殺された。管理事務所には「このふたりが姦通していた」と書かれた文書が。いきなりゾワゾワした出だしから、この別荘地に住む六組の夫婦と男女二人の管理人、それぞれのドラマが繰り広げられる。表面上は何もなさそうで、心の中ではそれぞれが穏やかではない色んな思いを抱えていて。今回も終始不穏な空気を感じながらも、覗き見感覚でついつい読まされてしまう。井上さん、そんな男女の危うさを描くのが上手い。後半に登場した動画。タイトルの『猛獣ども』も意味深。2024/10/06
萩
73
これを読むと異性のことなんて永遠にわかりあえないような気がする。長野県のとある別荘地。永住を決めた夫婦たちと管理人が住む。彼らはうまくいっているようでしっくりきていない。ある日別荘地に熊が出没した事件をきっかけにそんな微妙な心の機微が浮き彫りになる。皆一皮剥けば猛獣ども。というより曲者どもで共感は難しい。いっそ全員離婚してしまえ、と叫びたくなるがこの清々しくなさが作者っぽい。ただ軸となる管理人の男女の話は結構好き。若い二人の繊細な距離感が好ましく思えた。ラストもほんの少しの明るさが後味を良くしている。2025/02/23
ネギっ子gen
70
【くまっちゃうな~ 熊さんに襲われて~♪】閑静な別荘地で起きた“姦通”事件の後、管理人の若い男女と6組の夫婦それぞれの複雑な思いが達者に描かれる。若い管理人ふたりの不器用な恋愛模様は、相手の胃袋を掴むことで成就的なベタな展開だが、せっせとお弁当作りに励むのが男性というところが今風か。されど、偽装仲良し夫婦である“鍼灸師の亭主”恭一の場合は、別荘地に移住後から食事はそれぞれ勝手に食べるが、<料理というものがまったくできない。炊飯器さえ使い方が覚束ないので、白米が食べたいときにはパックごはんを温める>と……⇒2024/12/09
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